【とっておきメモ】前田悠伍プロ1勝 中学時代恩師が明かした秘話「かっこ悪いと思ったんやろ」
<楽天3-5ソフトバンク>◇13日◇楽天モバイルパーク
ソフトバンク前田悠伍投手(19)が悲願のプロ初勝利を手にした。敵地楽天戦で今季初登板先発し、6回4安打無失点。6回無死一、二塁では珍しい三重殺でピンチを切り抜けた。大阪桐蔭から23年ドラフト1位で入団した未来のエース候補。昨季はプロ初登板で3回6失点だったが、リベンジのマウンドで快投を見せた。チームは連敗を「3」で止め、2位に浮上した。
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教え子の記念すべきプロ1勝に、人知れず喜んだ人がいる。前田悠が中学時代に所属した湖北ボーイズの加納得太郎会長(63)だ。
「勝てて、良かったですね。うれしいですよ」と、電話越しに声を弾ませた。
負けず嫌いで、責任感が強い。加納会長は「負けた時に1人でよう泣いとったわ。『お前、いつまで泣いとんねん』言うて怒ってた。でも、『悔しい』思いを常に出していたのは、悠伍やったかな」と当時を振り返る。勝負事への執着心は人一倍。練習中の空き時間。チームメートが休憩する中、ランニング、シャドーピッチングする姿は印象的だった。
「目標がある子は自然に頑張ろうとする。悠伍なんかは典型的なタイプです。自分で道を知らず、知らずに作って、歩いていける」
プロでの大成を確信する出来事もあった。前田悠がプロ初先発した24年10月1日のオリックス戦(みずほペイペイドーム)だ。加納会長は現地で見届けるも、3回を8安打6失点KO。試合後には再会することができ「悠伍、ご飯行くぞ」と、食事に誘ったという。だが返事は「いいです」。「ええやんけ、たまには」と再度誘うも、かたくなに断られた。「会長。(1軍で)勝ったら連れて行ってください」と初勝利するまでは、お預けとなっていた。
加納会長は「こんな恥ずかしい姿を会長に見せて、かっこ悪いと思ったんやろ。『トレーニングします』って言って、トレーニングしに行きよった。その時に『たいしたもんやな』って思った」と秘話を明かした。
苦い1軍デビューから285日。失敗を糧に、プロ野球選手として新たな1歩を刻んだ。恩師は教え子のさらなる飛躍を信じ、期待している。【ソフトバンク担当=佐藤究】
◆湖北ボーイズ 2000年(平12)に設立し、公益財団法人日本少年野球連盟(ボーイズリーグ)関西ブロック、滋賀県支部に所属。滋賀県びわ湖北東部で、長浜市を中心に活動する。主なOBに元ソフトバンク古沢勝吾、中日土田龍空、巨人横川凱。同ボーイズ出身で、ドラフト1位入団は前田悠伍が初めて。