【高校野球】ア軍森井翔太郎の母校が12日初戦 桐朋・背番号6継承の小出弘人「夏1勝を」/西東京
今春に高卒で米大リーグのアスレチックスに入団した森井翔太郎投手兼内野手(18)の母校桐朋が12日、初戦(府中市民球場)を迎える。
大先輩が背負った背番号6を継承したのは、1学年下の小出弘人内野手(3年)。渡米前に譲り受けた「バッティンググローブ」を形見に“未来の大リーガー”でも届かなかった「夏1勝」をつかみに行く。
日米球団スカウトが熱視線を送った昨夏の富士森との初戦はまさかの2-9の大敗。三塁手だった小出は、ぼうぜんとしゃがみ込んだ遊撃森井を見て「もう一緒にできないのかという気持ちは人一倍大きかった」と当時の屈辱を思い返す。
投手では最速153キロ、野手では高校通算45本塁打。偏差値71の進学校で異彩を放った秀才球児は守備に入れば、「安心感があった」(小出)と言う。
しかし、森井の夏は無念の結果で幕を閉じた。それでも、「まだ自分も練習に行くから何でも聞いていいよ」。そう後輩らに優しく声をかけ、秋以降も自主トレーニングでグラウンドに顔を出せば現役部員の相談に乗ってくれた。
小出自身も森井から打撃の足の上げ方を教わった。
ただ、感覚やイメージを元にアドバイスする「森井塾」での学びは一朝一夕で身に付くものではない。大先輩と己の感覚を効率よく調和していくためにはどうすればいいのか-。
「動画、撮っていいっすか?」
小出は森井にそう聞いた後、アドバイスの様子をスマートフォンで撮影し、インタビュー形式の動画にまとめて見返した。結果、春以降の練習試合では打率4割近くをマークする右の好打者に成長したという。
渡米前の3月初旬。小出はグラウンドで国内最後の調整を終えた森井から「バッテいる? 」と、黒色が基調のバッティンググローブを贈られた。公式戦では使えない品だが、「宝物っていうか、森井先輩がいた時を思い出させてくれる」
海を渡った森井はその後、ア軍傘下のルーキーリーグで本塁打を放つなど夢のメジャーへ歩を進める。
一方、杉並との初戦に臨む後輩が戦う舞台は、前回苦杯をなめた府中市民球場だ。「夏の1勝で森井先輩の向こうでの活躍を後押ししたい」と小出。東京から8000キロ以上離れた現メジャー本拠地サクラメントへ、吉報を届ける。【泉光太郎】