ベンチに退いた後も誰よりも声を張り上げて仲間を鼓舞する学習院の乕渓(撮影・平山連)

<高校野球東東京大会:学習院11-5目黒学院>◇6日◇1回戦◇神宮

左足がつっていても、関係ない。学習院の乕渓有有(とらたに・ゆうう)外野手(3年)は、本能のままにダイヤモンドを駆け抜けた。

1点リードの3回1死二、三塁。外野に転がった打球の行方を見ながら、162センチ、87キロの体を揺らし全力疾走。父母会や同級生らが駆け付けた一塁側スタンドの盛り上がりが心地いい。

ベンチで見守る仲間たちからも「いいぞ、トラ」の大合唱を受ける2点適時二塁打だ。一息ついて「左足がピキッといっちゃって」と痛みが走り、直後に代走を送られた。

ベンチに退いた後も、ひたむきな姿は変わらない。誰よりも大声を張り「ここ集中だぞ」「2アウト!」「点差を考えろ」など声援を送った。グラウンド内外で活躍が光り、初戦突破に貢献。「とりあえず1勝できて良かった」と顔をほころばせた。

実家は埼玉・草加市にある浄土宗の寺院だ。法要の際には檀家(だんか)回りなどを手伝いながら、同校中等部に進学後から始めた野球にのめりこんだ。

新チームになった昨秋からベンチ入りをつかみ、実家から40分かけて学校に通って朝練習に欠かさず参加してきた。一生懸命にバットを振り込む姿は大きな刺激をもたらし、瀧沢拓也監督(49)は「彼が努力をしている姿を見てきたから、チーム全体が盛り上がる。ムードメーカーですし、応援される選手ですね」と目を細めた。

名前の有有(ゆうう)の由来は「自分がいることに対してありがとう」と感謝の意味を込めたと両親に言われ、「自分もかっこいいと思います」と気に入っている。その名のように味方から感謝を受ける全力プレーで、10日の2回戦で新宿に挑む。

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 【高校野球】学習院の乕渓有有が痛みこらえ適時打など初戦突破に貢献/東東京