チームをけん引する名取・高橋主将(左から4人目)と日野主将(左から3人目)(撮影・木村有優)

<東北地区注目選手紹介:連載4>

第107回全国高校野球選手権大会(8月5日開幕、甲子園)出場を懸け、来週から東北各地で熱戦が繰り広げられる。東北6県版では各県の注目校や選手を紹介する。第4回は部員不足により、連合チームとして出場する名取・仙台工(宮城)。合同での練習は休日のみ。初戦は13日、昨秋宮城3位の東北学院榴ケ岡と対戦する。名取8人、仙台工4人の計12人で勝利を目指す。

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仙台工の日野正太朗主将(3年)は、並々ならぬ思いで最後の夏を迎える。日野の高校野球はギャップで幕を開けた。入部前は「力があって、全員で厳しく野球をするイメージでした」。だが2学年上の先輩らが引退し、1年秋からは部員不足により連合チームとなった。

2年秋には2人にまで減少し、冬には唯一のチームメートが退部した。さらに、追い打ちをかけるように右肩痛にも見舞われた。孤独なうえ、けがの影響でまともにプレーはできない日々に「やめようかな」と頭をよぎった。それでも「2年間やってきたことを無駄にはしたくなかったので、残り半年、頑張ろうと思いました」と踏ん張った。

さらに、もう1つ。「歴史のある野球部を自分の代で終わらせたくありませんでした」。同校は、今年で創立129周年を迎えた伝統校。野球部も過去3度、夏の宮城大会準優勝に輝き、プロも輩出した実力校,だった。たった1人でこの伝統を守る覚悟を決めた。

「仙台工野球部」を終わらせてたまるか。冬は1人で基礎練習やトレーニングに励んできた。そして、孤独な冬を越え、春を迎えた。1年生は3人が入部。日野の思いが実った。まだまだ「仙台工野球部」は終わらせない。心強い後輩らと、頼もしい名取8人の仲間と最後の夏を戦う。「チームに貢献出来るようなプレーをしたいです」と意気込んだ。多くの壁を越えて、ここまでたどり着いた。ラスト1ページには、最高のエンディングを描くつもりだ。【木村有優】

○…連合チームを束ねるのは名取の高橋倖輝主将(3年)。扇の要、捕手も務める。「全員の能力や個性を把握するのが大変です」。さらに「連係がなかなか取れず」とプレー面での苦労も口にした。だが、メリットもあった。「人数が少ない分、ノックは数をこなせますし」。さらに、連合ならではの良さもあった。「平日は離れているので、週末に集まったときに会話が弾んで、すごく楽しいです」と笑顔をみせた。

思い描いていた高校野球とかけ離れていたが、退部は1度も考えたことはなかった。「ここまで野球をやらせてくれた親にも感謝して、最後までやり抜こうと思いました」。生粋の野球小僧。どんな形でも野球に対しての思いにはかなわなかった。高校野球も残りはわずか。「1番は楽しさを忘れずに戦いたいです」。悔いなく、笑顔で幕切れを迎えるつもりだ。

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 【高校野球】準V3度仙台工・日野主将は1人で伝統守る覚悟 名取と連合チームで出場/宮城