ドジャース対パドレス 二刀流に復帰し先発で登板するドジャース大谷(2025年6月16日撮影)

ドジャース大谷翔平が、6月16日のパドレス戦で投手として電撃復帰しました。以来、大谷自身がデーブ・ロバーツ監督はじめ首脳陣に進言したことにより、「オープナー」としてリハビリ登板を兼ねた短いイニングでの起用が続いています。

通常の先発と違って短いイニング限定ということもあり、6月16日の復帰初戦でいきなり最速100.2マイル(約161キロ)をマーク。同28日のロイヤルズ戦では、メジャー自己最速の101.7マイル(約164キロ)を計測するなど、ロバーツ監督も心配するほど、予想を超える高い出力となっています。

2020年に最初のトミー・ジョン手術から復帰した時は制球が乱れ、1死も取れずに降板したのがうそのように、ストライクが先行し、驚くほど制球力も安定しています。大谷のピッチングを見て、ロバーツ監督の意図が見えて来たように思えます。それは今シーズン最後の最後に、リリーフ起用という秘策です。

思えば、01年のワールドシリーズで当時ダイヤモンドバックスの大エースで「ビッグユニット」ことランディ・ジョンソンが第6戦に先発しました。4年連続世界一へ王手をかけたヤンキースに対し7回2失点と好投。第2戦に次いで勝利投手となり、逆王手をかけました。すると、続く第7戦の8回途中にブルペンからマウンドへ。何と、2試合連続の登板で1回1/3を無失点に抑え、9回裏に劇的な逆転サヨナラ勝利。メジャー史上最速となる球団創設4年目で初の世界一に輝く立役者となり、先発2枚看板のカート・シリングと共にMVPを獲得しました。

14年のワールドシリーズでは、当時ジャイアンツのエースだった左腕マディソン・バムガーナーがロイヤルズとの第1戦、第5戦に先発して勝利投手となりました。特に、第5戦は9回4安打無失点の快投で完封勝利を挙げ、10年以来5年間で3度目に世界一に王手をかけました。

しかしながら、ロイヤルズも逆王手をかけて迎えた第7戦。何と、ブルペンで待機していたバムガーナーが早くも5回からリリーフ登板しました。残る5イニングを投げ切って2安打無失点。先発にリリーフと大車輪の活躍で、世界一の立役者となり、見事MVPに輝きました。

ドジャースが20年のワールドシリーズを制した時は、レイズとの第4戦に先発した左腕フリオ・ウリアスが5回途中2失点9奪三振と好投しました。さらに第6戦の7回途中からリリーフ登板し、2回1/3を無失点に抑えて初セーブ。32年ぶり7度目の世界一に貢献しました。

また、昨年のワールドシリーズでは、43年ぶりの名門対決となったドジャース-ヤンキースで、第3戦にウォーカー・ビューラーが先発し5回無失点と好投しました。さらに第5戦の9回にリリーフ登板し、ヤンキース打線を3者凡退。4年ぶり8度目の世界一に貢献しました。

このように近年のポストシーズンは、長期戦のためリリーフ投手陣だけでは足りず、先発陣の力も必要になって来ます。そこでドジャースが21世紀初のワールドシリーズ連覇へ向けて、最後のマウンドを託すのは大谷以外にいないと思います。

なぜなら、23年WBC決勝の日本-米国戦で、大谷は9回にリリーフ登板しました。米国が1番からの好打順にもかかわらず、最後は当時エンゼルスでチームメートだった主砲マイク・トラウトを空振り三振。日本に3大会ぶり3度目の世界一をもたらした実績があるからです。

すなわち、オープナーはリハビリ登板だけでなく、ワールドシリーズでのリリーフ登板を見据える意味でも一石二鳥です。王座を決める大一番で、大谷がリリーフ待機の秘策を切り札に臨み、最後は大谷が抑えて2年連続世界一への青写真が見えて来そうです。【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 投手復帰・大谷翔平は抜群の制球力 ドジャースが21世紀初のWS連覇へ最後の最後に見せる秘策