【西武】西口ライオンズがラスト9分間で逆転勝利 鳥越ヘッドの「みんなが幸せに」の思い具現化
西武は1つ!! 首位日本ハムに2被弾して敗色ムード漂う8回。安打→犠打→四球で2死一、二塁を作り、長谷川信哉外野手(23)が逆転の2点適時三塁打で試合を決めた。
攻守に苦しむ外崎修汰内野手(31)の7回の代打同点適時打も、チームを1つにした。オンラインカジノ問題で騒がせた2人も、もちろんチームの仲間。スローガン「ALL ONE」の旗の下、全員で決める。全員で昨季91敗の屈辱を晴らす。
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追いついてすぐ離されても、獅子はズシーンと沈まない。鳥越ヘッドコーチの声がベンチによく響く。
「今年のチームは粘り強いんやぞ!簡単には終わらんぞ!」
そこが91敗、防戦一方の昨季とは違う。導かれるように長谷川の一打が右中間を抜けると2、3…いや、10人がベンチ前でガッツポーズ&三塁コーチ役に。長谷川がこぶしを挙げ、締めた。
リードしたのは最後のわずか9分間だ。それでも大きな1勝に違いはない。外崎がしみじみ言う。「いやぁ、すごいなって。1点差で負けてる中で逆転できるのは去年にはなかった」。そんな選手会長も逆転勝利の立役者だ。7回2死満塁、代打で同点適時打をしぼりだした。「気合入ってたっすね…気合、入ってたっす」。行間にあふれる。
打撃不振、不慣れな三塁守備での失策続き。「本当にふがいなくて」と、明るい顔をしながら苦しんだ。首脳陣は見捨てないでくれた。鳥越ヘッドは報道陣や相手チーム、ファンが見ている中でもあえて外崎とマンツーマンで特守した。
外崎だけじゃない。ヘッド職として、西口監督を支えながら、練習中には困っている人たちをサポートし続ける。開幕早々、今季から打撃投手で入団した石田啓介氏(29)が、誰しもが通る制球難で悩み始めた。見て見ぬふりをせず、マンツーマンで助けた。石田氏は今、3軍で1日100球以上を投げられるまでに回復した。ヘッドは言う。
「何かのきっかけになれば。できるって信じてるから。チームの人が幸せになればチームのみんなが幸せになる。チームが幸せになればみんなそれぞれも幸せになる。そこだと思う」
ライオンズ75周年、大勢のファンの旗がひらめく下で西武らしく勝った。長谷川も外崎も、グラウンド外で騒がせた。でも、決して孤立させなかった。年末年始に源田が世を騒がせた時は、炭谷が「やりづらくてしょうがない」と大声で場を明るくした。
外崎は「ヘッドからだけじゃなくて僕らも声を。僕らも一段階上がりたい」とまだ満足しない。隅田を孤軍奮闘にさせず、熱中症で降板した今井に変な空気を背負わせなかったこの夜が、また「L」の束を強くする。ALONEじゃない。ライオンズはALL ONEだ。【金子真仁】
▼昨年の西武は49勝91敗3分け、勝率3割5分の最下位。シーズン90敗以上は昨年の西武で24度目だったが、90敗以上した翌年に勝ち越したのは64年阪急と18年ヤクルトだけ。阪急は63年の57勝92敗1分けの6位から64年は79勝65敗6分け、勝率5割4分9厘の2位となり、ヤクルトは17年の45勝96敗2分けの6位から18年は75勝66敗2分け、勝率5割3分2厘の2位に。90敗した翌年に優勝はまだない。