「大谷2世」待望メジャーデビュー「オオタニと会えたらうれしい」27日からドジャースと3連戦
「大谷2世」と呼ばれる、ジャック・カグリオン外野手を取材してきました。昨年7月のドラフトでロイヤルズから1巡目(全体6位)指名されてプロ入り。フロリダ大学時代に投打二刀流で活躍し、今月3日に待望のメジャーデビューを果たしました。渡米して、本人と会って来ました。
まず野球との出会いについて聞くと「4歳の頃に野球を始め、当時から投手兼一塁手だった」。その後「7、8歳の頃から本格的に野球を行い、当時のヒーローはデビッド・プライス、それにアルバート・プホルス、ブライス・ハーパーだった」と3人の名前を挙げました。
とりわけ、フロリダ州タンパ出身で、同じ都市圏のセントピーターズバーグに本拠を置く、レイズのエースだったプライスに憧れたようです。同じ剛球左腕で、サイ・ヤング賞にも輝いたプライスの現役時代と同じ、背番号14を付けています。
高校時代から二刀流として注目を集め、大学では本人が「最速101マイル(約162.5キロ)を計測した」という剛速球を投げ、打っては数々のホームラン記録を樹立。ある記者から「ジャックタニ」のあだ名をちょうだいするも、本人いわく「最初はファンが呼び、それから同僚も呼び始めた」との事です。
ロイヤルズ入団後は二刀流でなく打者に専念。理由は「自分とチーム両方の意向。その方が早くメジャーに上がれるからだ」。確かに最近は投打二刀流でドラフト指名される選手が出て来ましたが、私が知る限り、プロ入り後は投手か野手のどちらかに絞っているようです。
今後「メジャーで二刀流はやらないのか?」という問いには「今はチームのことを第一に考えている。しかし、いずれチャンスが来たら再び二刀流に挑戦したい。そのため、マウンドからの投球練習は行っていないが、いつでも投げられるように投手としての準備も続けている」と言います。
彼が目指そうとするドジャース大谷翔平投手のすごさについて聞くと「彼は投げて打って走って何でもこなし、全てにおいてすごい。まるで超人のようで人間的にも素晴らしい」と尊敬のまなざし。また「日頃からオオタニの試合を映像で見て、多くのことを学んでいる」と話しました。
さらにア、ナ各リーグ本塁打王のアーロン・ジャッジ(ヤンキース)と大谷を比較して、どちらがすごいかと聞くと、少し考えながら「オオタニ」とキッパリ。理由は打球の飛距離である「ディスタンス」。ベーブ・ルースの時代から、誰よりも遠くまで打球を飛ばす選手にファンは憧れて来ました。彼も大学時代にNCAA記録の9試合連続本塁打を放った時、うちの1本が15年のスタットキャスト導入以降、メジャーの最長飛距離を上回る約157メートルという超特大アーチでした。それだけにホームランバッターとして、飛距離へのこだわりが強いのでしょう。
今季の目標は「10月までプレーすること」。すなわちチームの勝利に貢献し、ポストシーズンに出場することだと強調しました。個人的には「ホームランを20本打ちたい」と具体的な数字を挙げました。6月から20本打てば、フルシーズンで30本の計算になります。将来の夢は「ホール・オブ・フェイム」。つまり米ニューヨーク州クーパーズタウンにある野球殿堂入りです。私の記憶では、メジャーに昇格したばかりのルーキーがごくたまにその言葉を口にしますが、さすが「大谷2世」だけあって相当な自信家だと思いました。
父親はイタリア人で、母親がプエルトリコ生まれ。来年3月のWBCでは米国、イタリア、プエルトリコと3カ国で出場資格を持ちます。9日にプエルトリコの記者は、同国代表のカルロス・ベルトラン監督が招集に興味を示していると報道しました。
しかし、その前日に本人に聞いたところ「イタリア代表で出場したい」と明言しました。理由は「他国に比べて出場機会があるからだ」。WBCイタリア代表で2大会連続出場を表明しているチームメート、ビンセント・パスクアンティノ一塁手の存在も心強いかと思います。
その日、敵地シカゴのホワイトソックス戦に6番・右翼で出場しました。それまでメジャー昇格後5試合は21打数2安打でしたが、なんと4打数4安打の大当たり。うち3本は打球初速100マイル(約161キロ)以上と優にハードヒット。パワーを見せました。
今月27~29日(日本時間28~30日)は、本拠地カンザスシティーにドジャースを迎えて3連戦が予定されています。「その時にオオタニと会えたらうれしい。どのように投打二刀流で、全てをこなすのか知りたい」。憧れの大谷の前で、持ち前の豪快な打撃を見せることができるか? そして将来メジャーで大谷に次ぐ二刀流選手として活躍できるか、見守って行きたいです。
【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)