オーストラリア1部、Aリーグのパース・グローリーFCに所属するDF岡本拓也(本人提供)

日本代表が5日、来年6月に開幕するW杯北中米大会アジア最終予選でオーストラリア代表とアウェーで対戦した。その開催地となった同国第4の都市パースでプレーする日本人選手がいる。今年1月にJ1湘南からオーストラリア1部Aリーグ、パースに移籍したDF岡本拓也(32)だ。このほど日刊スポーツの取材に応じ、現地のサッカー事情や30代にして初めての海外挑戦に至った自身のキャリアについて、激白した。【取材・構成=佐藤成】

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今、Aリーグが熱い。岡本が所属するパースには、同じく元湘南のDF三竿雄斗も在籍。他にも、浦和の前主将だった酒井宏樹(オークランド)や水沼宏太(ニューカッスル・ジェッツ)長沢和輝(ウェリントン)ら日本代表経験者も、南半球に活躍の場を求めた。なぜ、ここまで日本人プレーヤーが増えているのか。

「現地ではオーストラリア・フットボール(AFL)が一番人気。ラグビー、クリケットの次にサッカーがきます。それでも、サッカー専用スタジアムがあって、クラブハウスもしっかりしています。Jリーグの方が充実度は高いですが、うちのジムは日本よりいいのではないかと思うくらい広くて整っています」

そう話す岡本のパースの場合、クラブハウスから練習場まで距離があり、自家用車で移動する必要があるというが「慣れてしまえば全然問題ないです」。土地が広く、清潔感があり、ゆったりした国の風土も居心地の良さを促進させる。家族で移住すれば、子どもが英語習得の機会に恵まれるのも魅力の1つだ。

「Aリーグにも日本人は多いですけど、州ごとのセミプロリーグにもたくさんいます。週3回くらいの活動で月に2~30万円くらいもらえるところもあって、サッカーをやりたい人にとっては良い環境ですね」

サッカースタイルはJリーグより激しいのが印象的だ。

「みんな体が大きいので、フィジカル的な能力は高い。単純に走るスピードや体がぶつかるところは日本ではあまり体感できないところはあります。サッカーの考え方が日本とちょっと違って、球際とか、ぶつかる局面を重要視しているように感じました。そこで強さを出せる方が評価されやすい」

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異国ならではの苦労もある。巨大な国土に加え、リーグにはニュージーランドのクラブも参加しているため、移動は日本の比ではない。国内でも時差があり、試合前日は練習をせずに移動で終わることも多い。ニュージーランドに行く際は、数日前に入ってから調整するという。

「初めての経験ばかりでしたけど精いっぱいのことはやれました。日本では考えられないハプニングもありました。試合前日に悪天候で飛行機が飛ばず、バスで10時間かけて移動する可能性もありましたが、結局試合が延期に。そういうのも楽しめましたね」

「世界一美しい」と称されるパースの街も気に入った。

「都心部は高層ビルがあって栄えていますけど、ちょっと外れると緑が多くて自然豊か。街並みもとてもきれいです。日本でいうと福岡みたいな感じですかね」

物価は日本より高く、日本で話題の米は5キロで「1万円しないくらいじゃなかったかな」。外食は費用がかさみ栄養も偏るため、自炊生活にシフトした。鍋料理をよく作り、フルーツをスーパーマーケットで買った。人としても成長を実感する半年間だった。

そもそもJリーグで250試合以上の出場実績がある岡本はなぜ32歳にして海を渡ったのか。元々海外志向は全く無かった。16年から所属した湘南でキャリアを終えるものだと漠然と考えていた。しかし-。

「ここ2、3年、自分自身の停滞感や出し切れていない感覚があって、新しいチャレンジをしないといけないかなと。このまま日本でしかプレーしていないのと、いろいろなところでプレーするのは後の人生で大きく変わるだろうなと思って、最後は直感でいきました」

選手として殻を破りたい。人として成長したい。素直な思いに従った。この挑戦を「修行」と位置づけて自分自身に向き合った。チーム合流初日に負傷し、3月にも試合中に別箇所をケガ。もどかしい日々で自問自答する時間も増えた。カフェでコーヒーを買っている間に車がレッカー移動されて、練習に遅刻したこともあった。

全ての経験が糧になっている。日本では起こりえないことも試合中に起こる環境といい「ピッチの中で考えて、行動する力はちょっとついたのかな」。悩みに悩んで決めたオーストラリア移籍。「あの時、思い切って決断できて良かった」。今は、そう言い切れる。

◆岡本拓也(おかもと・たくや)1992年(平4)6月18日、埼玉県生まれ。道祖土サッカー少年団、浦和ジュニアユース、ユースを経て高3の10年にトップ昇格。同年には17歳269日で当時のクラブ最年少デビューを飾った。浦和には18年まで所属。その間にJ2長崎や湘南へ期限付き移籍。19年シーズンから湘南に完全移籍。25年1月にパースへ渡った。対人の強さが武器。世代別代表の常連で09年にU-17W杯に出場。U19、U-22でも活躍した。175センチ。血液型O。

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 日本人プレーヤー増加中!豪州1部Aリーグが熱い 32歳DF岡本拓也「修行中」パースでの挑戦