帝京三・小田真、幼少時の脳手術で右半身麻痺が残る体で4安打完投 夢はプロ野球選手
<高校野球春季関東大会:帝京三4-2藤代>◇1回戦◇18日◇ノーブルホームスタジアム水戸
帝京三(山梨2位)が藤代(茨城3位)を破り、2回戦進出を決めた。
エースの小田真投手(3年)が真っすぐとチェンジアップを武器に、5回まで、2四球と失策による1点のみの“ノーヒットワンラン”投球。4安打2失点で完投勝利を決めた。
幼少時の大病の影響で右半身にまひが残る体で、感謝の思いを込め、1球1球丁寧に投げ込んだ。3歳で脳動脈瘤(りゅう)、4歳時にはランゲルハンス細胞組織球症を患い、大手術を受けた。
リハビリを重ね、小1で「野球は全身スポーツだから」と両親の勧めで野球を始めた。「今は私生活には全く影響はありません。少しだけ右半身の感覚が薄いかな、と感じる程度。右半身がうまく使えないので。左半身が頑張らないといけない。でも、左半身に偏ると、全体のバランスに影響してしまう。うまくバランスを見ながら、投げています」。この試合でも、前半はクイックで投球し「今日はそれが全然ハマっていなかったので、4回からは足を上げてしっかり1本で立って投げるようにしました」と、フォームを修正。制球よく変化球で打たせてとった。
大きな夢がある。卒業後は「日本以上のレベルの高いところで技術を磨きたい」と、アメリカの大学進学を希望。その先のプロ野球、またメジャーリーガーも視野に入れ、夢は世界へ広がる。「子どもたちに、病気をしても野球ができる、プロ野球選手になれるんだ、という勇気と希望を与えたいです」。病気を克服した自信が、小田の成長を後押しする。
昨秋は、関東大会初戦敗退で悔し涙を流した。春、同じ舞台で1勝を手にし、笑顔でマウンドを降りた。「この病気をしていなかったら、野球に出会えていなかった。ここにもいません。だから、病気に感謝ですね」。身長165センチ、体重63キロの小柄な体が、誰よりも大きく輝きを放った。【保坂淑子】