花束を受け取る新潟医療福祉大佐熊監督(中央)(撮影・小林忠)

新潟医療福祉大サッカー部の佐熊裕和監督(61)が13日、新潟県新発田市の猿橋中に招かれ、全校生徒の前で「夢」をテーマに講演会を行った。

14年から監督を務める同大と、神奈川・桐光学園高(86~13年)で輩出したプロ選手は80人以上。進路を少しずつ考え始める時期にある中学生に「夢は見ることでなく『動きだす』こと。夢を目標に変えた時、人生が動き始め、今より成長できるよ。真剣に取り組み、悩み、挫折し、苦労して、人間力を太くしていってね」と語りかけた。

自身も挫折と挑戦を繰り返すサッカー人生だ。教員2年目で桐光学園高サッカー部の監督を引き受けた87年は、部員2人からのスタート。そこから地道に力をつけ、5年後の92年に全国高校総体初出場。翌93年の高校選手権神奈川県予選決勝ではGKの1発退場で10人になりながらも残り20分で2点ビハインドを追いつき、PK戦を制して全国選手権初出場を手にした。「正直、試合中は諦めていた」と振り返りながらも、「選手たちに諦めない大切さを学ばせてもらった」。当時の経験が今の指導のベースにつながっていることを明かした。

その桐光学園高では、長く日本代表の背番号10を背負い世界と戦った中村俊輔氏(46=現J1横浜FCコーチ)も指導した。「彼(中村)は横浜マリノスユースに昇格できず仕方なく桐光学園に来た。プロ入り前も後も大きな挫折を経験しながらも成長した選手」とプレー動画とともに紹介し、「ただうまい選手から超一流になったのは、彼が努力の天才だから。学習もそうだけど、毎日の習慣で差がつくよ」とも話した。

新潟医療福祉大の監督に就任した当初も全国と戦えるチームではなかったが「北信越から全国制覇」を掲げて強化を進め、近年は冬の全国大学選手権2度、夏の総理大臣杯1度の準優勝と、全国の強豪の仲間入りを果たした。だが、桐光学園高時代を含め日本一の経験はまだなく、「高校、大学と全国の決勝で1度も勝てていないという挫折がある。それを突破することが、今の夢」と自身の夢も打ち明けた。

同大は10日、プロ、アマチュアが出場し真の日本一を決める天皇杯の新潟予選を勝ち抜き本戦出場を決めた。その後、12日に行ったJ1アルビレックス新潟との練習試合では「1年生」2人が得点を決めて2-1で勝利。同クラブには昨年3月の練習試合でも4-2で勝つなど、メキメキと力を伸ばしている。

講演の最後には「夢をかなえられなかったら負けか? そうじゃない。結果ではなく、課程が大切。根っこが太く成長する機会になる。それが人間力につながるよ」とメッセージを送った。【小林忠】

◇佐熊裕和(さくま・ひろかず)1963年(昭38)12月1日生まれ、東京都出身。87年神奈川・桐光学園高サッカー部監督に就任。27年間で全国高校選手権準優勝1回、3位2回。全国高校総体3位2回。13年に日本サッカー協会S級ライセンスを取得し、同年に中国3部リーグの梅縣(バイケン)を指揮。14年に新潟医療福祉大サッカー部監督に就任し、インカレ準優勝2回、総理大臣杯準優勝1回。プロに育て上げた選手は、矢村健(J1新潟)、小森飛絢(ベルギー1部シントトロイデン)ら80人以上。

○…佐熊監督とともに登壇し、来季入団するJ1横浜FCの特別指定選手として既にプロデビューしているDF細井響(4年)は「夢を諦めないことを大切にしてください」。来季J3ギラヴァンツ北九州に入団するFW吉田晃盛(4年)は「自分に矢印を向け、日々、努力してください」と語り、講演会後はサッカー部の選手たちと暗くなるまでボールを追った。

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 高校時代の中村俊輔氏指導を例えに 新潟医療福祉大サッカー部佐熊裕和監督が中学生に「夢」講演