新庄剛志は逆境に強い人…その生きざまが監督の手腕として発揮されているかも/寺尾で候
<寺尾で候>
日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。
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日本ハムが単独首位に躍り出た。地元開幕のエスコンフィールド北海道を訪れたときもトップに立ったが、その春先とは“首位”の重みが違う。まだまだ先は長い。このままいくとは思えない。
しかし、日本ハムは着実に力をつけてきた。拙者が現地に入ったとき、まだ北広島市の桜木は花をつけていなかった。しかし、なぜかそのスポットにだけは桜が咲き誇った。
その場に真っ白なシャツのコントラストで姿を現したのが、監督4年目を迎えた新庄剛志だった。「ずっとビデオに見入ってました」。しばしの“プチ花見”タイムを過ごした。
監督に就任した当時は「あの新庄が?」と疑問視する声も上がった。2年連続最下位で逆風にさらされた。昨季はソフトバンクに次ぐ2位で、この3シーズンで魅力のあるチームを作り上げた。
現役時代はスターだったし、イチローと野手初の大リーガーとしても経験を積んだ。ずっとウオッチングしてきた新庄は逆境に強い人。その生きざまが監督の手腕として発揮されているかもしれない。
満開の桜をバックに「毎日何を考えてるんですか?」と問いかけると、真顔で「だれを下(ファーム)に落とそうかと、いつも迷ってるんです」という。それだけ戦力が整った自信の表れだろう。
若手が表紙になった「anan」(マガジンハウス社)の売り場は人だかりだった。立ち読みしていると、ギャルが「オジサン、1人一冊ね」と教えてくれた。若手には人気の後押しも力になる。
首位に浮上した5月11日の楽天戦(エスコンフィールド)は、吉田のプロ初の先頭打者本塁打が効果的だった。現役ドラフトでソフトバンクから新加入。新庄の1番起用が的中した。
現場に足を運んだ4月2日のソフトバンク戦に勝って首位に立ったときも、水谷の故障によって開幕1軍切符をつかんだ吉田が、プロ初本塁打を放って古巣に一泡吹かせた。
そういえば日本ハムにとって上沢が引き抜かれたのは想定外だ。開幕投手候補に挙がってもおかしくない計算できた主力にとっとと出て行かれた。ソフトバンクとは“仁義なき戦い”になる。
「若い人をしつけるのは難しいですか?」と聞いたら「ぼく育てるの好きなんです。でも厳しくやってるつもりです。できれば2軍監督とかやってみたいですね」と性に合っているようだ。
2000年生まれを強化指定選手にしていることから、沖縄キャンプで先輩にあたる阪神日本一監督・岡田彰布と対談した様子など話題は尽きなかった。
「土台作り? いやいや、もうそんなレベルじゃないです。勝負にいきますよ。だから選手にも厳しいし、コーチにはもっと厳しく言ってくつもりです。そしていい形で次の人に引き継げればいいなと思ってるんですよ」
シーズン35試合を消化した時点での20勝14敗1分けは、プロ野球人生の原点でセ・リーグ首位の阪神とまったく同数で並んでいる(12日現在)。どちらもこのままいけばの話しだが、交流戦の“目玉”になるのは間違いない。
(敬称略)【寺尾博和】