東海大相模対横浜 3番手で登板し力投する横浜・奥村頼(撮影・北村健龍)

<高校野球春季神奈川大会:横浜5-4東海大相模>◇7日◇決勝◇横浜

王者横浜は、土壇場でも強かった。4-4で迎えた延長10回タイブレーク、2死二、三塁から駒橋優樹捕手(3年)の中前適時打でサヨナラ勝ち。7年ぶりの優勝で、昨秋から続く公式戦連勝記録を25に伸ばした。東海大相模に先手を取られる苦しい展開も、4回途中から登板したエース奥村頼人投手(3年)が6回2/3を4安打5奪三振無失点の好投で流れを引き寄せた。横浜と東海大相模は春季関東大会(17日開幕、茨城)に出場する。

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心の底から喜べる結末が待っていた。延長10回、駒橋が中前適時打を放つと、三塁走者の奥村頼がバンザイをしながらサヨナラのホームを踏んだ。「こんな場面が回ってくるなんて。スゴイ!」と、笑みがはじけた。

チームのために-。その姿は、横浜のエースに相応しかった。3点ビハインドで迎えた4回途中からマウンドに上がると、低めに制球して丁寧に打ち取った。「自分には心強い野手がいる。三振よりも打たせた方が野手も乗っていける」。延長10回、東海大相模の先頭、3番中村龍之介外野手(3年)には「外角真っすぐで三振を取りたいけど、詰まらせよう」と、内角直球で右飛に打ち取った。6回2/3を4安打。劣勢をひっくり返す流れを作った。

センバツで優勝投手になれなかった悔しさをマウンドにぶつけた。智弁和歌山との決勝戦では6回途中から3番手でマウンドに上がるも、1回2/3を投げ4安打2失点で降板。「納得できる内容ではなかった」。喜ぶチームメートの中で、下を向いた。周囲に「優勝投手になりたかったんじゃない?」と聞かれるたび、悔しさが込み上げた。何度もセンバツの動画を見直した。そこには、投げたい球を投げて打たれる自分がいた。「自分よがりのピッチングだった」。自分自身を見つめ直し、この大会のマウンドに立っていた。

ボクシング4団体統一スーパーバンタム級王者井上尚弥(32=大橋)の言葉にも背中を押された。準決勝前、スパーリングを見学。4度目の防衛に成功後の「このチームは最強に心強かった」という言葉に、チームのために投げるという思いをあらためて確認した。

センバツ後、村田浩明監督(38)には「春、勝って本物」と言われ続けた。「センバツで優勝投手になれなかったことが自分を成長させてくれた」。そしてこう付け加えた。「チームのために投げる。これは怪物になるための大事なこと」。同校OBで西武、レッドソックスなどで活躍した松坂大輔氏に近づきたい。奥村頼のひそかな野望に火がついた。【保坂淑子】

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 横浜劇的V 奥村頼人エースの投球「センバツで優勝投手になれなかったことが成長させてくれた」