【東京V】急造3バック統率した陰のヒーロー、深澤大輝「努力は嘘をつかない、証明してやろう」
<明治安田J1:東京V2-0横浜FC>◇6日◇第15節◇味スタ
東京ヴェルディが、ピンチをチャンスに変えた。チーム一体となった攻守で横浜FCに2-0と勝利した。
千田海人が負傷離脱、谷口栄斗は出場停止と3バックの主力を欠く中で、しかも前節浦和戦から中2日。厳しい状況下で、3日前から先発6人を入れ替えて臨んだ。苦しい台所事情にあって、抜てきされた選手たちが活躍した。
3バックの中央に入ったのが、26歳のDF深澤大輝。プロとなってからはサイドバックが本職。174センチとセンターバックとしては見劣りするサイズだったが、相手1トップ、183センチ、87キロの巨漢FWルキアンに絶妙な間合いで自由にプレーさせなかった。巧みなラインコントロールでハイラインをキープし、周囲へのコーチングも積極的に行った。
まさに陰のヒーローとなった深澤は「ルキアン選手が強いのは知っていました。でも映像であんまり跳んでこないところであったり、駆け引きのところは自分は得意。(開始早々の)競り合いで勝てたのは大きかったし、自分の良さが出たと思う」と振り返った。
千田、谷口が不在の中、城福監督は「グループとして最大値を出すには深澤しかない」と浦和戦後に抜てきする考えを持っていた。統率力を持つリーダーシップを買ってのものだった。前日の紅白戦で急造3バックを試し、いきなりの実戦だったが、不安はなかった。
J2時代以来の中央でのプレーとなったが、「僕はもともとセンターバックをやっていて、大学4年からサイドバックになった。歴としてはセンターバックが長い。だから落ち着いて入れました」。
今季はベンチ入りもなく、リーグ戦15試合目にして初出場だったが、「ケガも合ったり難しい時期が続きましたが、仁志さん(森下コーチ)のエクストラ(居残り練習)のところで誰1人見捨てないでやってくれましたし、その積み重ねがあったからこうやってチャンスをつかむことができた。やっぱり選手層を厚くするというところで言ったら、本当に日々の練習が大事だなと思いました。ありきたりですけど、毎日の練習、努力は嘘をつかない。そういう言葉を証明してやろうと思っていました」。ここまでの道のりを振り返り、その思いをかみしめた。
城福監督も「本当に期待に応えてくれたし、彼の期する思いっていうのが、チーム全員に伝播したんじゃないかと思っています」とわが事のように喜んだ。
一方、後半アディショナルタイムの46分に追加点を奪ったのは、期待のルーキーFW熊取谷一星だった。
明治大から入ったアタッカーはここまで苦しんでいた。3月2日のガンバ大阪戦に途中出場して以来、ベンチ外。2カ月ぶりにベンチ入りすると後半21分から出場。右からのカットインから思い切りよくシュート。相手DFの体に当たるディフレクションとなりゴールに勢い良く飛び込んだ。
「素直にうれしいです。前半からすごいみんなが戦っていたので、出たら求められること、気持ちを出してやるだけでした。相手の逆を取ると考えていて、うまくファーストタッチ、セカンドタッチができたのでいいコースが狙えた。普段練習からやっている形が出たので良かった。今までと変わらず積み上げていくことが大事。一日一日をやっていきたい」
深澤と熊取谷だけでなく、この日ボランチで先発したMF稲見哲行らこれまで出番が少なかった選手が求められた仕事をこなし、これぞヴェルディという一体感のある勝利だった。
城福監督は「最終ラインも中盤も急造の中、よくお互いの良さを辛抱強く、我慢するところは我慢して耐えたことで最後に追加点が取れた。それも、ここのところメンバーにも入れなかった熊取谷一星が取ったということは、このチームにとって大きなことだと思います」。
誰かに頼るサッカーでなく、全員がフェアに競争した中からピッチに立つ権利を得られる。そんな日常を紙1枚1枚を積み上げるように過ごしてきた男たちが、チームとして得た1勝。直近5試合は3勝1分け1敗と調子を上向いており、順位も暫定ながら11位に浮上した。6位と躍進した昨季のペースに近づいてきた。【佐藤隆志】