【西本聖】広島森翔平と阪神伊原陵人の左腕対決「攻める」闘争心で明暗も…ともにこれからが勝負
<阪神8-1広島>◇20日◇甲子園
まだ始まったばかりだが、今季の順位予想で下馬評が低かった広島が首位に立っている。その原動力になっているのが、今試合で先発した森の活躍が挙げられるだろう。昨年、1勝しかしておらず、プロ入り通算3年間で6勝しかしていない左腕が、開幕から3連勝。阪神のドラフト1位ルーキーで、プロ入り初先発した伊原とともに、この左腕対決を注目していた。
序盤で明暗が分かれた。まず広島の森は、立ち上がりから慎重になりすぎていた。初回2死二塁で好調の佐藤輝を打席に迎え、カウント1ストライクからの2球目だった。捕手の石原は高めの釣り球を要求したが、力んだ分、指先に引っ掛かりすぎたのだろう。外角高めのストライクゾーンに入り、先制の2ランを浴びた。
このケースでの投げミスはよくある。しかし、外角高めに強い佐藤輝には、投げてはいけないコース。力んだとはいえ、投げミスでももっと高めに浮き上がるような真っすぐになるような大胆さがほしかった。
球威があるタイプではないだけに「攻める」という闘争心を出さないといけない。この試合で6安打されたが、打たれたヒットは近本、佐藤輝、前川(いずれも2本ずつ)で、すべて左打者だった。もっと内角を攻めないと、今後は厳しくなるだろう。
森と似たタイプの伊原は、よく腕が振れていた。これまで中継ぎで結果をだし、巡ってきた先発のチャンス。これまでと、意気込みも違っただろう。テークバックがコンパクトで、キレのある球を投げていた。右打者の内角を狙った球が甘くなるケースもあったが、森とは違って思い切り腕を振って投げていたから、打者が打ち損じたのだろう。ルーキーであり、プロ入り発先発にもかかわらず、捕手のサインに首を振って投げていた。度胸もあるのだろう。
森にしても伊原にしても、これからが勝負。どちらも左打者の内角に投げる精度がよくない。右打者に対して逃げていくような変化球も、自分の武器にしているようなイメージはなかった。どちらも真っすぐの球速は140キロ台の中盤で、豪腕タイプではない。もっと制球力を上げるか、落ちる球や右打者に対して逃げていくような変化球がほしい。それができれば、2人ともスライダーやカットボールがいいだけに、勝てる投手になれる資質はある。(日刊スポーツ評論家)