【西武】41歳おかわり君が激走、激走で3位タイ浮上貢献 母校の門たたいた長男に負けじと奮闘
<西武5-0オリックス>◇16日◇京セラドーム大阪
体重102キロで、愛称は昔からずっとおかわり君。それでも西武中村剛也内野手(41)は懸命に走るし、遅くない。
1点先制後の初回、4番打者として痛烈な右中間二塁打で出塁し、5番外崎の当たりが三遊間を割った。
この時、熊代聖人三塁ベースコーチ(35)は腹を決めていた。
「レフトの西川選手はけっこうバラツキもある」
「相手が曽谷投手と考えると、回して点が入る可能性を生まないといけないゲームになる」
そしてもう1つ。
「しかも中村さん、けっこういいスタートを切られていたんで」
中村剛本人もそう感じていた。「いやぁ、スタート良かったんで。回すかなと思って走って」
オリックス西川の捕球と、三塁を蹴るのがほぼ同時。送球はわずかに一塁側にそれ、捕手若月が機敏に動き、中村剛の足にタッチ。残念ながらホームは踏めず、アウトになった。体を傾け、両手を突いた。
「足、遅かったっす」
熊代コーチは自身の判断を「猛反省」と言った。ただ、チームには今季、間違いなく走塁への意識が浸透し、実践されている。
「意識してできることの当たり前のラインを上げようと、鳥越ヘッドを中心にやってきて。コーチ陣も選手たちもみんなすごく意識が上がって、ベテランや外国人選手もしっかり走って。いい流れです」
中村剛の“激走”は初回だけでない。5回の二塁ゴロも懸命に走った。7回は三遊間を抜けるかと思ったら、遊撃紅林が最深部で追いつき、しかも一塁に送球した。だから全力疾走。セーフ。余韻でそのまま50メートル近く走ることになった。
41歳にして、大きな体にして、なぜこれだけしっかりと走れるか。
「別に。でもあんまり走れてないっす、自分の中で」
満足いく走りができていた時期もあったからこそ、自己評価は厳しめだ。昨年のある日「足はもう子どもたちに負けてるかな」と言ったことがある。
その長男・勇斗さんはこの春、自身の母校である大阪桐蔭の野球部の門をたたいた。大阪に遠征に来たからといって簡単には会えない。それぞれの舞台で頑張るのみ。脚力は負けても、それ以外はまだまだ負けちゃいられない。
9回の第5打席もレフト前に転がし、今季初の1試合3安打。打率は4割5分に上がった。「いい手応え? そうっすね」。さすがにここで代走でお役御免に。最後はベンチで腕を組んでどっしりと、勝利の瞬間を見つめた。【金子真仁】