【静岡人魂】プロ2年目、FW神田奏真「苦しい時に点を」元日本代表FW“大黒様”指導で進化中
静岡学園高から24年に川崎フロンターレ入りしたFW神田奏真(19)が、今月9日のJ1横浜戦(U等々力)でリーグ戦に今季初出場した。新たに就任した元日本代表FWの大黒将志コーチ(44)ら名手たちからストライカーの薫陶を受け、成長中。28年ロサンゼルス五輪を目指す世代で、今秋にはU-20W杯チリ大会も控える。国内7冠クラブと代表で厳しいレギュラー争いに身を置き、飛躍の1年にする。
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神田が、開幕から9試合目でようやくリーグ戦の出番をつかんだ。1-1の後半17分に小林悠と代わってピッチに入る。7連戦の4試合目。体を張ったポストプレーで前線の起点となるなど精力的にプレーした。チームは後半追加タイム10分の劇的同点弾で3-3に追いつき、神田も歓喜の一員となったが、自省する。
「ボールには絡みましたけど(約40分間で)シュートは打っていない。FWなので、そこはしっかりやっていきたいなと思います」
2月の開幕時は、U-20アジア杯中国大会のためチームを離れていた。出遅れている間に、FWは山田新とエリソンが併用される形が定着。なかなかチャンスが訪れなかった。過密日程で迎えた横浜戦で、やっと出場機会を得た。だからこそ得点がほしかった。「出た時には結果を残したいとずっと思っていた。やはり点を決めたかった」と個人的には満足できなかった。
プロ2年目、出場だけでは納得できない。静岡学園では1年から全国高校選手権のメンバー入り。2年から正選手となり、最終学年は高円宮杯U-18プレミアリーグWESTで前半戦11試合12得点と爆発した。川崎F内定を勝ち取って選手権にも出場し、迎えた2度目の春。国内7冠クラブで着実な進歩を遂げている。
良きライバル、良きお手本が最前線にはそろう。スタメン起用が多い2人のほかにも元日本代表の小林。「参考にできる部分はやはりたくさんあるし、いいところは盗んで、自分をより良くするために吸収したい」。中でも今季からコーチに就いたJリーグ通算177得点を誇る名FW、ジーコジャパンでも“大黒様”の愛称であがめられた大黒氏の存在は大きいという。
「動き出しの部分は常々言われてるので、そこに関しては学ばせてもらっています」。師匠は独特な感性の持ち主だ。キャラクターも明るく強烈で「言語としては分からなくても、オグリさん(大黒コーチ)は結構(身をもって)やってくれるので、見て学べるのはデカいです」。言葉だけでなく、プレーで示されるから説得力がある。身長も同じ178センチで、DFとの駆け引きやシュートバリエーションの巧みさといった武器も共通しており、成長へ最高の教材となっている。
自身は、勝負強さも持ち味だ。プロ1年目の昨季、デビュー戦となったアジア・チャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)の敵地ブリラム(タイ)戦で後半追加タイムから出場し、いきなり初ゴール。続く山東(中国)戦で等々力でもお披露目され、初アシストした。参加3度の世代別代表でも計6得点を挙げる。
飛躍の2年目へ。昨季までチームメートだった元フランス代表FWゴミス氏からも「代表を引っ張っていく選手に育っていくことは間違いない」と期待を寄せられる。神田も「苦しい時に点を取れるFWになりたい」と理想像へ突き進む日々。エースへの階段を着実に上っている。【佐藤成】
◆神田奏真(かんだ・そうま)2005年(平17)12月29日、大阪府生まれ。3歳で競技を始め、小中学校時代は東淀川FCでプレー。静岡学園高では1年時に全国選手権8強。3年時は2回戦でPK戦の末に敗れた。24年に川崎Fでプロキャリアを開始。世代別代表はU-16候補で初選出されてU-18~20と定着。9番を託される。家族は両親と兄、姉。利き足は右。178センチ、73キロ。血液型A。