西武西口文也監督(2025年4月4日撮影)

昨シーズン91敗、借金42という屈辱からの再建を図る西武が、3軍の夏合宿を計画していることが14日、分かった。8月上旬から約2週間の滞在日程で、北海道・美唄(びばい)市で合宿を行う予定がほぼ固まった。春季キャンプでも秋季キャンプでもなく、異例といえる“プロ野球の夏合宿”を経て、近未来にライオンズ黄金時代を取り戻す。

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広々とした石狩平野で、生まれたての獅子たちが感情むき出しで白球を追う。西武3軍が北海道・美唄市で夏合宿を行う計画が、ほぼ固まった。すでに年間で50試合近い試合予定が入っている3軍ながら、この時期はスケジュールが白紙だった。そんな真夏を豪快に、北の大地に委ねる。

伝統的なキャンプとは意味合いが違う。聞き慣れない、プロ野球の夏合宿-。背景もある。Jリーグが26年シーズンから「秋春制」に移行することに伴い、スポーツの夏のキャンプ地候補として冷涼な北海道が注目され始めた。

野球界でも東京6大学野球の慶大が近年、リーグ戦のない8月に旭川市などで2週間前後のキャンプを行っている。高校球界では今春センバツ優勝の横浜(神奈川)が、夏の甲子園に出場できなかったここ2年間は紋別市で夏合宿を行った。西武3軍も今回、美唄と縁が結ばれた。

歴史的大敗がクローズアップされたものの、西武はもともと過渡期にある。近年、主力打者のFA流出が相次ぎ、球団は数年前から次代の主力育成へストーリーを練ってきた。19年秋には3軍制を導入。育成選手も増え、現在は28人が在籍する。今季は青木智史3軍総合コーチ(45)を指揮官に、元1軍監督の田辺徳雄3軍野手コーチ(58)らが親身に寄り添いながら、昨秋ドラフト1位の斎藤大翔内野手(18)をはじめとした若獅子を育てている。

技術指導のみならず、定期的に面談や研修も行われ、今季からシニアアドバイザー職となった潮崎哲也氏(56)らも定期的にチェック。さらには1軍の西口文也監督(52)も1軍の試合前に3軍戦を視察するなど、球団を挙げて「再建」を図っている。3軍のボトムアップは、獅子復権へのシンボルの1つといえる。

北海道には独立リーグ球団もあり、夏合宿中に練習試合を行うことも可能だ。美唄で美しく熱い汗を流し、時には涙し、誇り高き強いライオンに育っていく。【金子真仁】

◆夏場の北海道合宿 新型コロナウイルス感染が落ち着いて以降、各競技で再び増加傾向にある。長距離を中心とした陸上、自転車、ラグビーなど、冷涼な気候を求めて多くのチームが訪れる。食事や温泉など、周辺の環境も申し分ない。注目はJリーグ。開幕が8月に変更となり、直前合宿を張るチームが増えると予想されている。

◆美唄市 北海道札幌市と旭川市のほぼ中間にある人口約1・8万人の都市。かつては炭鉱の町として栄え、現在は農業が盛ん。ハスカップ生産量は日本一で、美唄焼きとりでも有名。また約29キロに及ぶ「日本一長い直線道路」が走っている街としても知られ、今回の西武3軍夏合宿での体力強化の“アイテム”になる…かもしれない。

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 【西武】再建図り異例の「3軍夏合宿」計画 北の大地で8月、若獅子から次代の主力育成へ