阪神藤川球児監督(2025年3月26日撮影)

藤川阪神がいよいよ船出する。虎OBで日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(43)がシーズン開幕を直前に控え、25年タイガースの変化を分析した。オープン戦最終3連戦のスタメンから新体制の方向性を感じ取り、「新監督1年目ならではのプラスアルファ」に太鼓判。野手の起用法については「固定か否か」の行く末に注目した。阪神は明日28日、広島との開幕戦(マツダスタジアム)に臨む。【聞き手=佐井陽介】

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オープン戦ラストカードのオリックス3連戦では少し驚かされました。阪神の場合、開幕前最後の3試合は例年、開幕スタメンの野手8人がズラリと並ぶもの。それが今春は3戦ともメンバーが入れ替わっていたからです。

初戦は「7番DH」で3番手捕手と目される栄枝選手が入り、「8番遊撃」には高寺選手。2戦目は不動となる近本選手の「1番中堅」で島田選手が先発しました。3戦目は「8番遊撃」に小幡選手を入れて、途中出場も含め、できるだけ多くの野手を打席に立たせていた印象です。

藤川監督は3連戦の途中、「いい投手が投げてきてくれているから、生きたボールを見る日に充てさせたかった」といったニュアンスのコメントを残しています。選手は皆、固定メンバーだけでなくチーム全員で1年間を戦っていくんだという方針を感じ取ったのではないでしょうか。

個人的には藤川監督の就任直後から、新監督1年目ならではのプラスアルファ、変化に注目していました。これは阪神に限った話ではありませんが、監督が代わった直後のタイミングは、前任の監督時代に出番をつかめずにいた選手からすればチャンスでしかありません。もう1度、先入観のないフラットな競争のスタート地点に立てる可能性が高くなるからです。

そういった観点で言えば、藤川監督は少なくとも開幕前の時点では最後までまっさらな競争を貫きました。ギリギリまで1、2軍の線引きが分からなくなるほど、頻繁に選手を行き来させていましたからね。

今、控え選手のモチベーションは高止まりしていることでしょう。「俺たちにも割って入る余地があるんだ」という感覚が共有されているはずです。これは新しい監督の1年目ならではのポジティブな側面です。

もし新監督が誕生していなければ、高寺選手や栄枝選手の出番はここまで増えていなかったかもしれません。どの選手にもチャンスがあるという空気は、必ずチーム全体の戦力の底上げにつながります。

ここでもう1つ注目したいポイントは「シーズンではレギュラーを固定するのか否か」です。

今年の阪神は三塁レギュラーの佐藤輝選手が右翼も守ったり、遊撃レギュラー格の木浪選手が三塁を守ったり、多くの選手が複数ポジションをこなせる体制を取っています。開幕前から誰かがケガをしたり不調に陥った際の有事に備えていた印象ですが、シーズン開幕後は調子の良しあしによって頻繁にスタメンを変えていくのかどうか、この点も注目点になりそうです。

19~22年まで指揮を執った矢野監督時代は複数ポジションに前向きなチームでした。それが23年からの岡田監督時代はポジション固定でリーグ優勝、日本一も勝ち取りました。現在の主力組はどちらのスタイルも経験していますし、コーチの中でも藤本1軍総合コーチは両方の監督のもとでコーチを任されてきました。

積極的な盗塁企画や第3捕手の構築など、昨季からの変化にも挑戦しているタイガース。「岡田監督型」と「矢野監督型」のハイブリッドでどのような最適解の起用法を導き出すのか、興味深いところです。(日刊スポーツ評論家)

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 【鳥谷敬】藤川監督誕生が阪神にもたらした好影響とは…開幕後は「固定か否か」の起用法にも注目