【阪神】カブス打線を5回完全…20歳門別啓人がプロの厳しさ教わった巨人岡本和と坂本への2球
まだシーズン開幕前だというのに、阪神門別啓人への注目度が急上昇している。今春の実戦は20イニング連続無失点。しかも15日のプレシーズンゲーム・カブス戦(東京ドーム)で5回打者15人をパーフェクトに抑えたものだから、知名度が一気に全国区まで“うなぎ上り”している。
まだ高卒3年目の20歳ながら開幕ローテ入りが有力視される立場。とはいえ、まだプロ未勝利でもある。昨季は当時の岡田彰布監督から台頭を期待されながら、小さくはない挫折を味わった。「あれはちょっと悔しかったですね」。素朴な道産子が人懐っこい笑顔を一瞬だけゆがめた記憶は昨年5月3日、東京ドームの巨人戦での2球だった。
プロ2年目に感じた1軍打者と2軍打者の違いを教えてほしい--。昨季終了後、寒空の鳴尾浜で問いかけた。
「やっぱり甘い球を見逃してくれないところが1番ですかね。ファームだったら、ストライクゾーンに決めにいった球が少し甘くなっても抑えられたりする。でも1軍ではすぐにヒットになってしまう。ボール1、2個分のコントロールミスで全然違いました」
さらに具体的な話を進めると、左腕は3回6失点と打ち込まれた5月3日巨人戦の誤算を思い返した。
「坂本(勇人)さんと岡本(和真)さんにすごさを感じました。そもそも自分の調子自体が全然ダメだったんですけど、坂本さんへのフォークはある程度は低めに投げられていた。なのに拾われて、ヒットゾーンに飛ばされた。岡本さんへのボールは…。自分の球威がまだなかったんだとは思うけど、インハイをあそこまで飛ばされたのはちょっと悔しかったです」
1回2死一、二塁では坂本に外寄り低めのフォークをあっさり左前に引っ張られ、初回4失点の先制点を与えた。2回2死二塁では岡本和に2ボール2ストライクからの内角高め直球を物の見事にとらえられ、特大2ランを左翼席中段まで運ばれた。衝撃を受けた“あの2球”がプロの厳しさを教えてくれたおかげで、若虎の今がある。
左腕のルーキーイヤーから成長を見守ってきた安藤優也投手コーチは昨年5月の巨人戦直後、2軍再調整を命じる前後に「もっと投げる体力をつけよう」と言葉をかけている。その心は以下の内容だった。
「周囲から期待されて、どうしても結果が欲しくなったのか、小さくまとまってしまっていた。誰だってストライクゾーンの四隅に投げ続けるのはなかなか難しい。門別はストライクゾーンにストレートを投げ込んで、ちょっとコントロールミスしてもファウルを取れる投手になってほしい」
140キロ台後半の直球を大胆に投げ込み、多少のコントロールミスはボールの力でカバーする。スケールの大きい本格派への成長を期待する指導者にも背中を押され、20歳はいよいよブレーク街道に足を踏み入れようとしている。
「真っすぐのキレ、質を求めてやっていきたい。その上で投げた瞬間は真っすぐだと思わせる変化球も大事かなと思っています。腕の振りだったり、ボールの出方だったり…。真っすぐに見える瞬間があれば、スライダーもフォークもより振らせられるはずなので」
昨オフの段階でそうイメージしていた左腕。カブス戦の59球を見る限り、1歩1歩、理想像に近づいているようだ。【野球デスク=佐井陽介】