西武対阪神 9回表、ベンチから戦況を見守る西武西口監督(後方)(撮影・滝沢徹郎)

<オープン戦:西武1-0阪神>◇11日◇ベルーナドーム

西武が阪神相手に“ノーノー未遂”で完封勝ちした。9回2死まで継投でのノーヒットノーランも、阪神前川に数センチの差での内野安打を許し、リクエストでも覆らなかった。西武の新指揮官、西口文也監督(52)といえば、現役時代に3度のノーノー未遂でも有名。ただ未遂年は全てAクラス入りと吉兆もある。昨季は借金42、91敗。ノーモアどん底。ノーマークからひょうひょうと勝ち上がる。

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「9回2死」への敏感度では、球界に類を見ない。予感もあった。「心の中でひょっとしたら打たれるんじゃねえのかな…思ったりしなくはなかったけどね」。西口文也だからこそ。「自分がツーアウトから2回打たれてるから、打たれるならそこしかないって」。

獅子党はこの言葉の深意を知る。担当記者のSNSで紹介した。瞬く間にコメントや拡散が始まる。試合後2時間で13万人に届く。「経験者は語る」「説得力が段違い」「言葉に重みが」。とめどない通知に、スマホの充電が一気に危険水域にまで減っていく。

通算182勝118敗の大投手ゆえ、この“未遂”っぷりがある種のネタに昇華する。「ノーノーの難しさ? 何もございません。私の場合は途中から打たれてもいいと思って投げてたから」と悟りの域だ。

演出はした。先発候補の21歳左腕の菅井に対し、組ませた捕手は1軍初昇格の育成3年目是沢。「本当は違う捕手でいこうかなと思ってたけど」。菅井と是沢はファームで20回近く、バッテリーを組んでいる。「せっかくなんでね。大正解でした。ナイスリードでした」。若い2人が5回無安打でゲームを作った。

唯一の内野安打を打たれた新外国人トレイ・ウィンゲンター投手(30=カブス)も、ボスの未遂歴を耳にしていた。「後悔してます。反省してます」。笑いながら謝る。昨季勝率3割5分のチームだ。でも助っ人は「今はそういうチームに見えないですね。ここまですごくいい戦いができている」と実にうれしそう。

平良を抑えに配置してもなお、今井、高橋、隅田、いずれは戻る新人王武内…と先発陣は強力だ。ペナントレースで誰かがノーヒットノーランをする可能性は十分に。「それはもう、楽にずっとベンチで座って見てられるんでね」と指揮官もちょっと願う。この日は本拠地初戦。楽しそうな西口監督が、何よりの吉兆だ。【金子真仁】

【西口監督の無安打無得点未遂】

◆02年8月26日ロッテ戦 7回の福浦への四球だけでノーヒット。9回2死から1番小坂の打球は二塁後方、右中間の前にポトリと落ちるヒットに。「ちょっと悔しいけど僕にはまだ早い」。

◆05年5月13日巨人戦 2回の清原への死球だけで再び9回2死までノーヒット。しかし1番清水に本塁打を浴びてまたも快挙ならず。“あと1人”から本塁打されるのは初のケースだったが「あれだけ完璧に打たれて、すがすがしかった」。

◆05年8月27日楽天戦 9回まで1人の走者も出さない完全投球に抑えるも、打線の援護なく0-0のまま延長戦に突入。10回に先頭の沖原に右前安打を許し、三たび28人目の打者に初安打されて快挙を逃すことに。チームは10回裏にサヨナラ勝ちを決め「まぁ、チームが勝ったんで。ボクには縁がないんでしょう」。

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 【西武】9回2死からノーノー逃す「ひょっとしたら打たれるんじゃ」3度未遂西口監督は悟りの域