【J2いわき】鳥栖に1点ビハインドを執念で追いつき価値ある勝ち点1「復興から成長として」監督
<明治安田J2:いわきFC1-1鳥栖>◇第4節◇9日◇福島・ハワイアンズスタジアムいわき
2日後の3月11日、東日本大震災から14年を迎える。被災地の福島・いわき市に本拠地を構えるJ2いわきFCは、鳥栖と1-1のドロー。1点ビハインドを執念で追いつき、価値ある勝ち点1を手にした。「3・11」から立ち上がっていく東北勢の一員として、それぞれが思いを胸に戦いを続けていく。
試合終了を告げるホイッスルが鳴った。結果はドロー。だが、白星を見たかったはずのサポーターからは何度も「負けてないぞ!」を力強い声。イレブンは深々と頭を下げた。田村雄三監督(42)は「勝ちたかった。まだまだ道半ばですけど、復興から成長としていきたい」とスタジアムを包んだ観衆に感謝した。
浜を照らす、光であれ-。「震災がなかったら生まれてなかったクラブ、3・11は特別な日」と田村監督。いわきFCは津波被害と原爆事故からの復興支援のため、15年12月に誕生した。当時を知る選手は少ないが、映像で情景を伝え、どれほどの出来事だったのか、クラブ創設のきっかけを日常から伝承している。
特別な日を2日後に控えた一戦で、サポーター、いわきの人々に奮闘する姿を見せたいという並々ならぬ思いがあった。試合前、選手に改めて「感謝」という言葉の本質を伝えた。この日は朝からピッチが白一色、雪かきから始まった。
「こうやってスタジアムの雰囲気をつくってくれた全ての皆さんにも感謝だし、自分たちがサッカーができることが当たり前じゃない。いろんな方々に感謝しなくちゃいけないし、それを力に変えて100%、120%のプレーをしている姿をしっかり見せよう」
指揮官は力強く、選手たちを送り出していた。
言葉を受け取ったイレブンは躍動した。リードを許した後半6分、MF大西悠介(23)が「果敢に攻めていこう」と同点ゴールを決める粘りを見せた。90分間、チームは気迫のプレーで、10本の鳥栖を上回る全12本のシュートを放った。初勝利こそはあと1歩だったが、戦う姿勢は、サポーターを熱くした。
次戦は15日、アウェーでの藤枝戦。この一戦を通し、田村監督は気持ちも新たにした。
「改めて力強く前に進んでいこうと思いました。しっかり勝てるように準備したい」
原点を忘れずに、これからもいわきの夢を背負って戦っていく。【高橋香奈】