日本ハム新庄監督も雑誌の表紙飾ってブレーク「辞めようと」した男の“仕上げ”に注目/寺尾で候
<寺尾で候>
日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。
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今年の新庄さんは顔つきが違います。日本ハムで新たに4年目のシーズンに突入する新庄剛志監督と話す機会がありました。やる気満々が表情から伝わってきました。
拙者が「ちょっと顔のシミ抜きをやったんです」と打ち明けると、すかさず返されました。「ぼくも“工事中”なんです。開幕には間に合わせますから待っててください」と言われました。
新庄さんによる若手の売り出し作戦は、ひと味違ったエッセンスとなって表れています。先日は若手5選手が3月26日発売の「anan」(マガジンハウス)の表紙になったことが明るみにでました。
野球選手のイメージとかけ離れた、人気モデル、アーティストのようなイメージの特集号は、ちょっと手を伸ばしたくなる。またこれに新庄さんは自身のインスタグラムで反応した。
「この人気歌手グループの名前知ってる人いたら教えて下さい。うちにもこのメンバーみたいにカッコいい選手が沢山出てくるよう創り上げていきます。ananさん、有り難う御座います。もっと頂戴」
この表紙になった若手たちは勘違いしないかな。でも新庄さんは「大丈夫。それぞれにライバルをつけてますから」とメリハリをつけているらしい。油断していたら容赦なくメンバーから外すという意味でしょう。
監督に就任した当時、奇抜な振る舞いから「大丈夫か?」と懐疑的な声がほとんどだった。しかも2年連続最下位で「新庄ではダメじゃ~」と意見が噴出したが、昨季の2位浮上で手のひら返しです。
そこで新庄さんに「開幕前に評論家がする順位予想って気にしますか?」とうかがってみた。本人からは「はい。気にします」という答えが返ってきました。
「おそらくみなさんうちは3位か、4位じゃないですか。去年はまぐれだろという人がほとんどだと思いますよ」
エスコンフィールド北海道は評判が良いのに、依然として失策数が多いのはどうしてだろうか。今年は人工芝になったから変わるかもしれません。選手たちに意識があればですが。
おそらく新庄さんだから楽しい野球、エンジョイベースボールをイメージしているかもしれません。でも実は違います。はっきりと打ち明けられました。
「楽しい野球なんてしませんから。開幕からめいいっぱいやってもらいます。コミュニケーションはとりますが、おれはこう思うと言いますが、あとは本人に考えさせます。そして野球を楽しむのは9月からだと思っています」
そういえばニューヨークメッツに在籍した新庄さんがフロリダでスプリングトレーニングに参加していたときでした。人気ファッション誌を代表する「GQ(ジーキュー」の米国版の表紙を飾ったことがあります。まだ日本版は刊行されていなかったから衝撃的でした。
しかも、GQが発売される前のゲラを日刊スポーツは「ドッカーン!」と1面でスクープしたのです。あのときも開幕前で引き締まった顔つきでした。あの表紙から新庄さんはブレークしていくのです。
これでもかという金満補強のチームが優勝争いをするのは当たり前です。だから評論家陣の順位予想はソフトバンクの1位が当然と思います。そこにけなげに立ち向かう。
「ほんとは去年で辞めようと思いました。ぼく3年で集中力いっぱい、いっぱい。でも悔しかったんです。勝ちたいです」
これまでパ・リーグ存亡の危機を救ってきた男です。日本ハムの「顔」になる選手はだれでしょうか。いよいよ新庄さんが“仕上げ”に入ります。(敬称略)【寺尾博和】