富士大・安田慎太郎監督(2023年6月7日撮影)

<富士大強さの秘密に迫る>

昨秋ドラフト会議で育成含め6人が指名を受けた、北東北大学野球リーグの富士大(岩手)の今季は「チーム力」がカギとなる。本年度は過去最多となる66人の新入部員を迎える予定。主将に就任した松坂映杜内野手(3年=弘前学院聖愛)を中心に「常勝軍団」をつくりあげる。エース候補には実戦経験もある角田楓斗投手(2年=東奥義塾)が名乗りを上げ、先輩たちが成し遂げられなかった「全国制覇」に挑む。20年から指揮を執る安田慎太郎監督(40)には指導法を聞き、強さの秘密に迫った。【取材・構成=木村有優】

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指導法で安田監督がもっとも大事にしているのはモチベーションの維持だ。

「まずは邪魔をしないことが一番ですね。それぞれの目標を持って頑張っている中で、モチベーションをどう上げるか、逆に下げない。否定してばかりだとやる気がなくなってしまうと思う。自ら進んで行っている取り組みをまずは邪魔しないようにしています」

1人1人と向き合うことが指揮官のポリシーだ。同校は主力選手で構成されるA班と、控え選手で構成されるB班に分かれて練習を行っている。コーチ時代は両班に同等のことを求めていたが、監督に就任して以降は考えも変化した。

「起用する側になって、使ってあげられないのに求めすぎるのはどうなのかなと。B班なりの苦しさもあるので。ただ、後輩が背中をみて『やらなきゃ』と思えるような形をつくるのは仕事ということは伝えました。以前は就活シーズンに入ると辞める子もいましたけど、ここ2年は『B班でも最後までやりたい』という子が増えました。野球選手が全てではなく、指導者や将来子どもに教えるためでもいい。存在意義はたくさんあるので。個人にあった需要と供給のバランスを大事にしています」

そして、個々の強さはトレーニングにあった。昨秋ドラフトでオリックスから1位指名を受けた麦谷について、指揮官は大学でのトレーニングが上位指名につながったと考えている。

「上にいく選手はウエートをこなして、体重や筋肉量増加が共通しています。きつくて逃げる子は上がってこない。(他チームと比べて)内容は変わりませんが、取り組み方などが全てですね。だからこそ、僕はその土台をどれだけつくれるか。良い土台をつくれば、同じメニューでも選手たちが意識高くやってくれるので、それが成果としても出ます」

決して特別なことをしているわけではない。意識改革や土台づくりを施した結果だ。そして何よりも、安田監督のポリシーとも言える1人1人への配慮が選手を育て、強いチームを作り上げている。

◆安田慎太郎(やすだ・しんたろう)1984年12月17日生まれ、宮城県仙台市出身。仙台高から東北学院大に進学。06年には全日本大学野球選手権に「4番右翼」で出場も、初戦で九州東海大に敗れた。大学卒業後はクラブチームや独立リーグでプレー。16年に富士大コーチに就任。20年夏から同大監督に就任した。監督就任後のリーグ優勝回数は春3度、秋3度。

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 富士大「常勝軍団」へ安田監督は「邪魔しない」1人1人と向き合い、モチベーションの維持大切に