藤川監督(中央)は歓迎セレモニーで挨拶をする(撮影・上田博志)

<寺尾で候>

日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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沖縄県が取り組む「スポーツアイランド構想」が沸騰点に達する季節がやって来た。年明けからJリーグ計20クラブがサッカーキャンプを行った後、プロ野球が続々とキャンプインした。

沖縄県文化観光スポーツ部・スポーツ振興課班長の宮平洋志は「プロ野球のキャンプ地巡りを目的としていない方々にも知ってもらうために、那覇空港にシティドレッシングをしています」と語った。

沖縄にはNPB(日本プロ野球機構)に所属するチームが14カ所(1軍9球団、2軍5球団)に集結する。韓国からも昨年から2球団増の6球団が来沖。これから約1カ月間盛り上がりを見せる。

那覇市のシンクタンク、りゅうぎん総合研究所によると、24年に県内各地で行われた春季キャンプの経済効果は、177億9300万円(前年比76億4000万円)で過去最高を算出した。

総観客数は延べ45万7000人、同研究所が調査を開始した03年以降最多だった。もっとも経済効果が高い数字をはじき出したのが19年(141億3100万円)だから、これを大きく上回った。

23年は、新型コロナウイルスの5類移行後初の春季キャンプで、岡田彰布が率いた阪神が18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶり日本一の年だった。沖縄・宜野座でキャンプをする“阪神V効果”が如実に表れた形になった。

コロナ禍で無観客を強いられた21年の経済効果は23億6600万円。宮平は物価高騰などの影響も挙げた上で「なにか劇的に変わったかというのは多方面の分析も必要」としたがV字回復したことは間違いない。

「なにが数字的根拠かはわかりませんが、もともと人気球団ですし(阪神効果は)あったかもしれないですね。やはり沖縄に来ていただいている9球団から優勝したのは大きい。今回は巨人はセ・リーグ優勝、DeNAが日本一になった影響がどう出てくるか。そこは期待しています」

第2期に突入した「スポーツアイランド沖縄」構想で、プロ野球キャンプ誘致は「アウター施策」と定められている。今でも沖縄県にはNPB以外の近隣国からキャンプ実施の申し込みがある。

また県内の何カ所の自治体で、球場を改修し、プロ野球をはじめとするチームを誘致する動きをみせる。降雨も多いが、温暖な気候、施設面の充実を考慮すると、来年以降もキャンプ数が増える可能性がある。

ただこのキャンプ期間は、ほとんど市町村民は地元の球場が使用できない。少年少女が練習、試合ができる環境を確保するのに苦労しているのも実情だ。ここは県側も今後の課題として説明と理解を求める必要性を感じている。

キャンプ前夜は、恒例になった日本ハム監督の新庄が主催する花火大会がキャンプインの号令だった。初日になった新生阪神は大勢のファンが来場。夕方はDeNAが優勝パレードを行うなどにぎわった。

“キャンプを制すは、ペナントレースを制す”という言い伝えがある。「沖縄」「宮崎」の地元に密着する約1カ月間、チームの仕上がりがシーズンを乗り切る第一関門になるのは確かだろう。(敬称略)【寺尾博和】

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 “阪神効果”あったかも、沖縄の経済効果V字回復 キャンプを制すは、ペナント制す?/寺尾で候