JR東日本カップ2024 第98回関東大学サッカーリーグ戦1部で優勝した明大FW中村草太主将(右)。左は中野雄二関東大学サッカー連盟理事長(2024年11月17日撮影)

昨年末に開催された全日本大学サッカー選手権(インカレ)は、東洋大の初優勝で幕を閉じた。前回まで出場24チームのトーナメント形式だったが、今大会から一新。グループステージのリーグ形式が導入され、一発勝負ではなくなった。開催場所も全国に広がり、決勝は栃木開催。敗者も「強化ラウンド」で公式戦の機会を得られる仕組みへと変化した。全日本大学サッカー連盟の中野雄二理事長に、大改革の意図と大会の総括を聞いた。【取材・構成 岩田千代巳】

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大会形式が一新された大会を終え、中野理事長は「2年前から委員会を立ち上げてこの形をつくりました。出場したチームのアンケートはこれからで、経費増の課題はありますが、個別に聞いている中では大会の方式については、いい大会という評価です」と振り返った。

【改革1・一発勝負からリーグ戦へ】 今大会から、決勝ラウンド進出の16チームが、4組に分かれグループステージ(GS)を戦い、各組上位2チームの計8チームが決勝トーナメントを経て優勝を決める形となった。

公式戦の機会を増やすことに加え、ワールドカップ(W杯)を含め、国際大会で採用されている背景もある。中野理事長は「ワールドカップ(W杯)もオリンピック(五輪)もアジアカップ(杯)大会もグループリーグがあって決勝トーナメント。これが世界の大会のスタンダードで、同じにした方がいい」。

現在は、大卒選手が日本代表へと羽ばたく時代。大きな大会の公式戦でこそ、選手が育つ。約2年の準備期間を経て、大改革に踏み切った。

【改革2・出場チームの決定方法】 かつては、各地域の優勝チームは無条件で出場できたが、今回から変化した。

決勝ラウンド出場校は夏の総理大臣杯優勝チーム、関東リーグ1位と2位、関西、東海、九州リーグの優勝チームはストレートイン。今大会は、阪南大が夏を制したため、関西の2位だった関大がストーレートで入った。残りの10枠は、一発勝負の「プレーオフ(予選ラウンド)」で決めた。

中野理事長 夏の総理大臣杯は地方のチームがより多く出られるように、32チームでの一発勝負のトーナメントにしました。でも、冬はチャンピオンシップ。強いチームだけでやるべきだと。前回までは、リーグで優勝すれば、そのまま本選に出場できましたが、地方のチームは1回戦で大差で敗退するケースが多い。逆に関東、関西は強豪大学が数多くあるのに、枠が決められているから力があるのに出られない。だから勝った方が(本選に)出ればいいとプレーオフ制を導入しました。

プレーオフの組み合わせは、過去数年の全国大会の結果をポイントで換算して決めた。

桐蔭横浜大(関東第7代表)が広島大(中国1位)に5-1、東洋大(関東第3代表)が札幌大(北海道1位)に5-2、日大(関東第6代表)が四国学院大(四国1位)に4-2、大体大(関西第4大表)が八戸学院大(東北1位)に2-0で勝利。関東と関西の底力を発揮し、決勝ラウンドに進んだ。

一方で、夏の総理大臣杯3位の東京国際大(関東第5代表)が、関学大(関西第6代表)にPK戦の末に敗れ、中大(関東第4代表)が東海学園大(東海第3代表)に0-1で敗れる波乱もあった。

プレーオフで敗れた10チームも、連盟推薦の2チームを含め3組に分かれリーグ戦「強化ラウンド」が設けられた。

【改革3・会場が全国に分散】 前回までは首都圏の会場での開催だったが、今回は全国各地で勝負が繰り広げられた。

プレーオフ(予選ラウンド)は、降雪の影響がある北海道をのぞき、リーグ優勝チームがホーム開催。広島大、四国学院大、八戸学院大、新潟医療福祉大はそれぞれの地元で戦った。

決勝ラウンドのグループステージは栃木、大阪、岐阜、北九州で開催された。関東、関西、東海、九州のリーグ覇者はホームで戦った。

中野理事長 東北、北信越、四国の1位は、ストレートインできない分、プレーオフはそのエリアでやるんです。ストレートインの関東、関西、九州、東海の1位は地元でやれる。関東は2位のチームは地方で戦った。そこはリーグ戦にこだわりを持つ意味もあります。

各地域の学生が、試合の運営に携わり「人間力」を育てる大学ならではの理念も、全国に広がった。

【今後3大会は栃木で決勝】 決勝トーナメントは栃木県開催だった。中野理事長は今大会を含め「4年間は、栃木開催になる」と明言する。今回の決勝戦は、J2栃木の本拠地・カンセキが、改修工事で使用できず、栃木グリーンスタジアムでの開催になったが、次回からはカンセキの予定だ。

栃木開催になった背景には、首都圏のスタジアムが高校サッカー、ラグビーのトップリーグの開催で使用できない現状がある。また、外国人観光客が増え、首都圏のホテルが高額で、部屋数を確保できないことも大きい。

中野理事長は「首都圏がダメだとしたら茨城、栃木、山梨、群馬しかない。なぜ、宇都宮にしたかというと、新幹線が止まる駅で、ホテルの数も多い」とし「大会ごとに開催地が変わるのでは、インカレのなく、インカレといえば栃木の宇都宮と定着していかないといけない」。今後は「カンセキ」が大学サッカーの聖地になる可能性がある。

【課題と今後】 第1回を終え、課題も出た。プレーオフから決勝ラウンドまでの間は1週間。プレーオフを勝ち上がった大学が、北九州開催の決勝ラウンドに出場するとなると、選手・スタッフの大人数の航空チケットを確保するのが難しい。また、大人数の宿泊先を確保するのも大変だ。

また、プレーオフで敗れ「強化ラウンド」に進んだチームの中には、4年生を引退させ、1~3年のみで出場したチームもあった。

中野理事長は「リーグ戦形式で日程が長くなったこと、宿泊施設の単価が上がり、経費が今まで以上にかかること、授業を休まなくてはいけないという意見は課題としては出ている」と現状を説明する。

デンソーチャレンジ杯でも、22年の大会から高校選抜、地方の選抜チームに門戸を広げ大会形式を変えながら育成の継続につなげてきた。今回のインカレの大改革も、課題を克服しながら、将来、どのような花を咲かせるか期待したい。

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 【大学サッカー】インカレ大改革で今後3年は栃木で決勝、中野雄二理事長に聞く意図と総括、課題