【解説】殿堂入りイチロー氏が満票逃した背景は?記者投票に王貞治氏「へそまがりもいる」
日本の野球殿堂博物館は16日、今年の殿堂入りメンバーを発表し、日米通算4367安打のイチロー氏(51=マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクター)が選ばれた。
有効投票349票中323票を獲得で、投票率は史上6位の92・6%。史上初の満票は逃したが、資格1年目での殿堂入りは18年松井秀喜氏、金本知憲氏以来、7年ぶり7人目となった。
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多くの人が、イチロー氏の満票選出を予想したのではないか。唯一無二の実績から、当然そうなるだろうと。もちろん、史上6位の92・6%もすごいのだが、26人の人がイチロー氏に投票しなかったことになる。
プレーヤー部門の投票は、野球報道に関して15年以上の経験を持つ委員によって行われる。つまり、記者投票。なぜ、100%にはならなかったのか、本当の理由は投票しなかった26人に聞かないと分からないが、過去との比較で言えることがいくつかある。
まず、残した成績と得票率は一致しないということ。投票者は候補から最大7人を記す。候補は年々、少しずつ入れ替わっていくため、その年に対抗馬がいなければ、トップの得票率は自然と高くなる。
また、候補資格は最長15年間。昔は、候補を上がる期限が近づいている人には優先的に投票する傾向が強かったとも言われる。今はその傾向が薄れているとはいえ「まだ残り14年ある」と考え、投票をしなかった人がいたのかもしれない。
さらに、イチロー氏の日本での成績だ。単純に数字だけみれば、1278安打にとどまる。実際は、日本の野球殿堂はメジャーでの活躍・貢献も対象に入るのだが、日本の数字だけで判断した人がいなかっただろうか。
最後に、もう1つ。イチロー氏のゲストスピーカーを務めた王貞治氏は「中にはへそまがりもいる」と率直に言った。投票は記名だが、誰が誰に投票したかは非公表。結局、人間がすることなので、候補者との距離感で投票行動を決める心理はあるだろう。
いずれにせよ、資格1年目で選ばれたのは史上7人目の快挙。何より、得票率がどうであれ「殿堂入り」という栄誉は全く変わらない。【古川真弥】