勝利と育成両立の“名将”新潟医療福祉大・佐熊裕和監督「全国初制覇狙う」新シーズンへ誓い
新潟医療福祉大サッカー部の佐熊裕和監督(61)が、新年の誓いを立てた。
同大は昨年、夏の総理大臣杯(24年9月)と冬のインカレ(同12月)でともにファイナル進出。初の日本一は持ち越しとなったが、全国に力を示した。22年度卒のFW小森飛絢(24)はJ2得点王&MVPとなり、ジェフ千葉からベルギー1部のシントトロイデンに移籍。選手育成と勝利を両立させる名将の勢い、存在感は増すばかりだ。【聞き手=小林忠】
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-冬のスカウト活動は
「(全国高校サッカー)選手権の準決勝と決勝。裏選手権(ニューバランスカップ、静岡)で主に2年生を視察した。オファーをする選手のリストアップや、指導者との情報交換をしてきたよ」
-昨年は総理大臣杯とインカレで決勝に進出
「優勝はできなかったけど、連続ファイナルは評価されているみたい。総理大臣杯は筑波さん、インカレは明治さん(ともに準決勝)に勝ち、選手は自信を深めることができた。ただ、どうしても最後1つが勝てない」
-東洋大とのインカレ決勝で感じた差は
「やっぱり個の力。あとは攻撃のバリエーション。高いレベルに行けば行くほど相手も研究してくる。なかなか難しかったな」
-個の力を上げるには
「結局は毎日の練習の質。細部にどれだけこだわっていけるか。そこ以外はないと思う。戦術もあるけれど、最後はごまかしが利かない1対1の局面。相手より先にシュートを打つとか、寄せるとか。練習から『昨日の自分より1ミリでも前に進めたか』を実感できる集団にもっとならないといけない」
-主軸に全国大会を経験した1~3年生が残る
「練習で積めない経験をした部分は必ずプラス。でも、誰も勘違いはしていない。全国では悠長にポゼッションを取れないし、ルーズボールも拾えなかった。『このままじゃダメだな』という雰囲気がある」
-新チームは21日に始動
「いい選手が入学するし、在校生も伸びている。1つのポジションを複数人で競わせる。紅白戦も昨年以上に白熱すると思う。選手起用によっては、いろんな角度から攻撃ができる」
-強化はどう進める?
「冬期間は島原と茨木のフェスティバルに参加するので、そこで選手を見極める。あとはシーズンが始まったら大学のリーグ戦と並行してJクラブとの練習試合をもっと増やしていきたい」
-全国で勝つ集団を作りながらプロ選手を輩出する
「特別なことはやってないよ。でも、練習中の表情だったりプレーは見逃さないようにしている。やっぱりターニングポイントってあるんだよね。そこで試合に起用するとか、声掛けをするとか。あと、ウチにはふてくされる選手がいなくなった。その雰囲気は全体に浸透して来ている。そこは大きい」
-OBの小森がベルギー1部リーグに挑戦する
「在校生のいい刺激になっているが、まだまだ通過点。もっとヨーロッパの高いレベルに行ってくれれば。アイツもそこで終わる気はないみたい。大学4年の最初に調子を崩したけど我慢して使い続けた。FWはプレーしてなんぼ。チーム内の競争に勝って結果を出して欲しいね」
-新年の目標は
「やるからには全国初制覇。毎年そこはブレないし、俺がいわなくても全選手たちがそう思っている。メンバー選考は横一線。誰がはい上がって来るか楽しみだね」
◆佐熊裕和(さくま・ひろかず)1963年(昭38)12月1日生まれ、東京都出身。86年神奈川・桐光学園高サッカー部監督に就任。27年間で高校選手権準優勝1回、4強1回、インターハイ準優勝1回。13年に日本サッカー協会S級ライセンスを取得し、同年に中国3部リーグの梅縣(バイケン)を指揮。14年に新潟医療福祉大サッカー部監督に就任し、インカレ準優勝2回、総理大臣杯準優勝1回。プロに育て上げた選手は、中村俊輔氏(横浜FCコーチ)、矢村健(新潟)ら60人以上。