【阪神】藤川監督「2月1日1軍は新人投手に全く意味ない」ドラ1伊原陵人らあえて2軍スタート
球児流は急がば回れ! 阪神藤川球児監督(44)が8日、兵庫・鳴尾浜球場で初日を迎えた新人合同自主トレを視察し、ドラフト1位の伊原陵人投手(24=NTT西日本)と同3位の木下里都投手(23=KMGホールディングス)を今春のキャンプで2軍発進させる可能性を示唆した。けがの影響などがない即戦力ルーキーでは球界でも超異例のプランだ。故障に泣いた自身の経験に基づく親心で、じっくりシーズンの戦力として育てるつもりだ。
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藤川監督は緊張の面持ちの新人9人と今年初めて顔を合わせ、温かなまなざしになった。「寒いから、とにかく気をつけてほしいという、それがまず最初に考えたこと」。寒風が吹きすさぶ鳴尾浜球場。ルーキーたちに呼びかけたのはケガをしない体づくりだった。
ドラフト1位の伊原、同3位の木下と社会人出身の即戦力投手が上位に並ぶ。2月の春季キャンプは当然、1軍発進かと思われたが、指揮官は2軍スタートさせる可能性を示唆した。
「僕も投手として寒いのがものすごく苦手だった。2月1日に1軍キャンプスタートというのは、若い新人投手にとって全く意味がないこと。これはもう間違いないと思います」
阪神で故障などの影響がなく、体調万全の大卒・社会人出身のドラフト1位ルーキーがキャンプ2軍発進となれば、90年以降では初めて。球界全体でも超異例のプランになる。サプライズ感満載の「球児流」は、自らの経験に基づいていた。
「自分のキャリアの中で一番しんどかったのがケガ。3年連続でキャンプリタイア1号をやったことがあるので」。23歳だった04年は、キャンプイン直後の2月4日に「右肩腱板(けんばん)炎」を発症して離脱。脂ののった11年にも、同7日に「右股関節内転筋炎」と診断され、リタイア1号となった苦い過去がある。
周りにつられてペースを乱し、復帰に時間のかかるケガはしてほしくない。藤川監督の親心。ゴールはキャンプインではなく、年間トータルで活躍することが一番大事と考えている。「焦っても意味がないでしょ。アピールはいらないです。健康が一番大事。2月1日にドラフト1位の選手が『オレが行きます』と言うと、他の選手はもっと行くだろうし」。1軍は宜野座、2軍は具志川と沖縄県内でキャンプを張っており、入れ替えはいつでもできる。なおさら1軍スタートにこだわる必要もない。
この日、藤川監督はルーキーたちに「キャッチボールは1球1球を大事に。バッターはもちろんランニングの1歩目を意識して」と訓示した。急がば回れ。焦らせず、シーズンの戦力としてじっくり見守っていく。【磯綾乃】
<近年、阪神のドラフト1位選手の2軍スタート>
◆08年 白仁田寛和投手(福岡大)は右肩痛の完治を優先させるため高知・安芸でキャンプイン。
◆09年 蕭一傑投手(奈良産大)はWBCの台湾代表候補だったため、調整を優先して安芸でキャンプを過ごした。
◆14年 岩貞祐太投手(横浜商大)は発熱による調整遅れのため2軍。キャンプ途中で安芸から沖縄・宜野座の1軍へ。
◆15年 横山雄哉投手(新日鉄住金鹿島)が左胸鎖関節の炎症により安芸でキャンプインした。
◆16年 高山俊外野手(明大)は前年秋に右手首を骨折したため2軍から。すぐに頭角を現し、最終盤の2月25日に宜野座合流。
◆23年 森下翔太外野手(中大)は右足肉離れのため2軍から。2軍キャンプが1軍と同じ沖縄になったこともあり、新人全7人が2軍スタート。森下は2月中旬に1軍合流。
◆24年 下村海翔投手(青学大)は自主トレで2度ブルペン入りしたが、ペースは抑え気味。大学1年時の右肘手術歴などが配慮される形で2軍スタート。4月に右肘トミー・ジョン手術。