くら寿司カップ 始球式を終えた佐野慈紀氏は笑顔で取材に応じる(撮影・滝沢徹郎)

近鉄や中日などで活躍した右腕で、糖尿病による感染症で右腕を切断した佐野慈紀氏(56)が21日、神宮での少年野球「くら寿司トーナメント2024 18thポップアスリートカップ」開会式に出席し、左投げの「ピッカリ投法」を初披露した。23年5月に右腕を切断し、その後も入院生活や手術が続いている。現在も腰の感染症で入院中だが、外出許可を得て代名詞の「ピッカリ投法」を復活させた。

【佐野氏の一問一答は以下の通り】

-投げ終えて心境は

マイナス10点ですね。でも、なんて言うんですかね、やっぱり少しでも元気を伝えられているんであればうれしいし。やっぱりグラウンドに立つと、気持ちが大きくなります。

-練習はどれくらい

しっかりトレーニングもしてたし、ステップもできるようになったし。練習はずっと硬球でやってたので、マウンドから届くぐらいにはなったんですよ。だから当初の目標は始球式でストライクを投げることだったので。それを考えると、やっぱり全然できてないような(笑い)。

-体調面は

体調面は特に問題なく。腰の痛みは今ほとんど消えてるので。あとは炎症値が下がるのを(待つ)。

-腰も問題なく

実は最初、2カ所に感染が見つかって治療してたんですけど、それを治療する中でもう1カ所感染が見つかって。それを今後また再度治療することになって、その影響でまた(退院は)年越しになるんじゃないかということですね。

-手術の可能性は

最悪の場合は(手術)。一応、抗生剤とかを飲んで、それで散らすことができれば、手術は回避できるんですけど。やっぱり透析とかするので、なかなかうまくいかない部分もあるので、最悪の場合はもう1度手術するっていう形になると思います。

-このまま年明けまでは入院が続くか

そうですね。ただ、こういうことが今後やっぱり何度もあるとは思うので。いちいち落ち込んでられないので。とりあえずはね、これがきっかけで僕としてはもっとしっかり、左で投げられるようになって。キャッチボールもできるようになったら、目標はもう1度野球教室をやりたいなと。その思いで頑張ろうかなとは思ってます。

-次の目標は野球教室

そうですね、こうやってこの大会も長く携わってるので、全国からいろんなチームが出て来てくれる関係もあって。1つのライフワークとして、いろんな学童野球の子たちと接するような、そういう活動をしたいなと。もう少し動き回れるようになったら、何年もかけて全国を回りたいなっていう大きな夢はあります。

-今後はどういった姿を見せたいか

一番はやっぱりチャレンジすることですよね。やっぱり僕も大好きな野球を子供の頃からやって、どんどんチャレンジして、プロ野球選手になれたので。プロ野球選手になって、そこそこ頑張ることができて、辞めた後も携わることができて。野球が嫌いになることなんて一切なかったんですよね。だからこそ、子供たちにはやっぱり一生懸命やって、野球って楽しいなって思ってくれるようなチャレンジをしてほしいなと思います。

-子どもたちには佐野さんの姿をどう感じ取って欲しいか

僕の姿がどうのこうのというよりも、いくつになってもチャレンジできるんだっていうことと。あと何度も言いますけど、野球って楽しいものだっていうことだけ感じてくれればいいなと思います。

-佐野さんにとって「ピッカリ投法」とは

まさかここまで自分のライフワークになるとは思ってなかったですよね。ただ、それで皆さんが笑顔になってくれるんだったら、僕としては本当にうれしいです。

-改めて糖尿病の恐ろしさは

やっぱり一番は糖尿病によって、抵抗力とか免疫力とか落ちてしまってることで、いろんな弊害が出てるんですよね。今回の腰の感染症も含めてそうですし。僕の場合は腕をなくすまでになってしまったんですけど。ただ、なんて言うんですかね、いくらでも対処はできると思うんですよ。だから、体に寄り添って、どんな状況でも健康第一で皆さんには過ごしてほしいなと。僕までにはなることはないんですけど、糖尿病に罹患(りかん)したとしても、落ち込むことじゃなく、対処は絶対できるし。僕はもともとアホみたいな強がりなので、こうやって強がってるんですけど、本当に体をいたわって健康で過ごしてほしいなと思います。

-始球式は輝いていたか

ダメですね。本当はね、もっとかっこよく投げたかったので、次はかっこよく投げます。

-最後にグラウンドに立ったのはいつか

グラウンドに立ったのは、そうですね…。実はこの5年間ずっと入院生活なので、6年前に息子とキャッチボールして以来ですね。

-久しぶりのグラウンドはどうか

やっぱり気持ちよかったです。雰囲気も違いました。練習はね、ずっと室内練習場でやってたので、やっぱり全然雰囲気も違います。空気も違いますし。僕の場合は本拠地は藤井寺球場ですけど、やっぱり神宮球場っていうね、こんな素晴らしい場でまた投げられたっていうのはうれしかった。

-入院生活で野球を見る機会が増えたが、新たに芽生えたことは

まず野球って面白いなと思ったし、楽しいなと思いました。ワールドシリーズ(WS)だけじゃなく、シーズン中の大谷選手の活躍とか、鈴木誠也選手の活躍とか。同じプロ野球でやってたっていうよりは、一ファンとしてずっと見てたし。もちろんNPBの試合もたくさん見ましたけど、本当に野球って面白いし、やっぱり俺(野球が)大好きなんだなっていうのは痛感しました。ただ、これは第1歩なので。次機会があったらもっともっと今度はストライクを投げるように頑張ります。ありがとうございました。

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 右腕切断の佐野慈紀氏、左で始球式「もう1度野球教室やりたいな。子供と接したいな」/一問一答