バルセロナ・レジェンズ対レアル・マドリード・レジェンズ 試合後、笑顔で写真に納まるバルセロナ・レジェンズのイニエスタ(右)とシャビ(撮影・横山健太)

<イニエスタ引退試合>◇15日◇味スタ

元スペイン代表の司令塔でバルセロナ、神戸などで活躍したアンドレス・イニエスタ(40)が、大好きな日本でサッカー人生に区切りを付けた。15日、東京・味の素スタジアムで引退試合に臨み、バルセロナ時代にしのぎを削った宿敵レアル・マドリードとのOB同士による「クラシコ」にフル出場し、2-1の勝利を収めた。今後は指導者ライセンスの取得も考えており、サッカーとの関わりを持ち続ける意向を明かした。

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奥ゆかしいイニエスタらしさが出た。1-1の後半追加タイム、FKを獲得した。誰もが主役の決勝点を待ち望む中、当の本人はそしらぬ顔でボールから離れたところにいた。キッカーはシャビ。ボールは壁に阻まれた。これで試合終了かと思われた。しかしまだ終わらなかった。直後にイニエスタにボールが渡った。左からゴールライン際を狙った柔らかなループパス。GKの伸ばした手に、そしてゴールバーに当たって落ち、相手選手のオウンゴールを誘った。劇的なエンディングを迎えた。

「大好きな日本に帰ってくることができました」。会場はボールの魔術師イニエスタを一目見ようと4万5725人の大観衆を集め、チケット完売。W杯、欧州選手権、欧州CL…、ありとあらゆるタイトルを手にした8番のラストダンス。その中でもクラシコは「特別な試合」だ。それを日本に持ち込み、引退試合とした意味は大きい。

盟友シャビとの共演はまた格別だった。「久しぶりの再会でしたが、我々はつながっている。今日もプレーをしながら色々と思い出すことがありましたし、素晴らしい時間だった」。史上最強と呼ばれたグアルディオラ監督時代。09年には6-2、10年には5-0と宿敵を一蹴した。その中心に2人がいた。引かれ合うようにこの日もハーモニーを奏でた。気品高く、細やかな心遣い。特別な演出はなくても、その共演に誰もが目を凝らし、楽しんだ。

「私のサッカーキャリアは終わりましたが、時間は止まりません。そして私自身これからもサッカーに関わり続けます」。指導者ライセンスの取得も考える。一方で実業家としても活躍するだけに「自分のキャリアがどこに向かっているのか見守りたい」。スペインと日本との架け橋になりたい-。そう願う優しき男の新たなピッチは大きく広がっている。【佐藤隆志】

◆アンドレス・イニエスタ 1984年5月11日、スペイン・フエンテアルビージャ生まれ。バルセロナ下部組織を経て、02-03年シーズンからトップチームでプレー。4度の欧州CL優勝など数々のタイトル獲得に貢献。W杯は06年ドイツ大会から4大会連続出場。10年南アフリカ大会決勝ではスペインを初優勝に導く決勝点を挙げた。18年に神戸に加入。19-20年の天皇杯でクラブに初のタイトルをもたらす。J1通算114試合、21得点。23年夏にUAE1部エミレーツ・クラブに移籍。24年10月8日に現役引退を発表した。171センチ、68キロ。

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 イニエスタ劇的ラストダンス 終了間際ループパスで相手オウンゴール誘発し勝利「大好きな日本」