【東京V】城福監督&江尻強化部長「最強コスパ軍団」の裏側明かす 練習と意識改革で日常が変化
16年ぶりのJ1を戦った東京ヴェルディが9日、東京都内でシーズン総括会見を行い、城福浩監督(63)と江尻篤彦(57)強化部長が最強のコスパ軍団の裏側を明かした。トップチームの人件費はJ2レベルの10億円未満。戦前の予想は降格候補の筆頭となる「20番目のチーム」だったが、ふたを開けてみれば6位フィニッシュ。J1日本人最年長指揮官に率いられたチームはどうやって躍進したのか。サプライズの軌跡をひもとく。
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城福監督は会見の冒頭、こう言って照れた。「おまえら6位だぞ、と。みんなをほめたのは(今季)初めてかもしれない」。厳しく接してきた。日々何をやり続ければ、この若い選手たちがどういうふうになっていくのか。「紙を1枚、1枚積み上げていく姿勢」で臨んだ先の6位だった。
今季開幕前の登録メンバーの平均年齢は20チーム中最も若い24・1歳。J1クラブで出場機会に恵まれないレンタル選手が多く加わり、新天地で「再起」を懸けて集まった。「J1で残留するには僕らは成長しかないんです」。日本人最年長の63歳指揮官は「成長」をテーマに掲げた。
勝つためには、質の高い選手をどれだけ集められるかはポイントだ。城福監督も「決定力とは年俸に比例する」と認める。経営規模に歩調が合うサッカー業界を鑑みれば、東京Vは自他共に認める「20番目のチーム」だ。今夏にJリーグが発表した23年度の「トップチーム人件費」をもとに、今季の勝ち点1に対し、どれだけのコストがかかっているのかを調べると、やはり東京Vは最強のコスパ集団だった。人件費7億7800万円に対し、勝ち点56。勝ち点1に対し1389万円。最もコスパの悪い浦和は38億6000万円を支払っての勝ち点48。勝ち点1獲得に8042万円もかけた計算となる。
その投資額の差を埋め、勝ち点に積み上げられたのは「日々の日常が変わったこと」(江尻強化部長)。城福監督の強いる厳しい練習、そして意識の改革だった。東京Vのサッカーとは攻守に渡って走り、全員が高い強度でハードワークをこなす。先発メンバーから途中出場へ、交代枠5人も含めた16人でバトンをつないで90分を戦い抜く。まさに一体感が肝となる魂のサッカーと表現ができる。サポーターの歌声がさらに選手のテンポを上げる。
成長の鍵となったのは、全体練習をやった上でさらに個々に「エクストラ」と呼ばれるメニューだった。頭から湯気を出して課題に取り組む。城福監督が繰り返し言う。「頭から湯気を出すというのは、汗じゃない。汗と気迫と悔しさと、これを毎日かくんです」。誰の席も決まっていない。つかむかどうかは自分次第だ。フェアな競争がチームを高みへと持ち上げた。
例えば、昨季はJ2でも出番が少なかった上、30歳で初めてJ1を戦ったDF千田海人はその典型だ。「最もピッチに遠かった選手。彼の愚直さがヴェルディを象徴している」。シーズン途中に定位置を確保し、6位躍進に貢献した。
甘いプレーには当人に映像を示し、手厳しく叱責(しっせき)する。自らを「昭和のおっさん」と称する城福監督は「本丸から逃げない。一番難しい関係の時にどう膝をつき合わせるか」。最後は人間対人間。それがあったからこそ、ヴェルディ旋風は吹いた。それにファンは心躍らせた。
クラブは01年の東京移転後、最高成績だ。それでも「最終節まで彼らにACLの可能性があるようなところまでやらせられたんじゃないか、そんな悔しさもあります」。続投する城福監督は、新たなシーズンへの思いもはせた。【佐藤隆志】