J3最終節大宮-富山戦に臨む大宮の選手たち(撮影・佐藤成)

<明治安田J3:大宮1-2富山>◇24日◇最終節◇NACK

大手飲料メーカー、レッドブルが株式を100%取得したJ3大宮アルディージャは、ホームでカターレ富山と最終節を戦い、現クラブ名での最後の試合を終えた。

前半に2失点を喫し、後半は攻め込んだがPKから1得点にとどまった。今季最終戦を勝利で飾れなかったが、リーグ優勝したシーズンを走りきった。

主将の石川俊輝(33)は「やっぱり勝って終わりたかったというのは正直なところです」と率直な思いを明かしつつ「ただこのエンブレムで最後のシーズンを、ちゃんとタイトルを取って終われたというのはほっとしていますし、本当に最低限のお別れの仕方はできたのかな」と振り返った。

昨季のホーム最終戦とは全く異なる光景がNACK5スタジアム大宮に広がっていた。1年前はクラブ初のJ3降格が濃厚で、悲壮感が漂っていた。今季は序盤から強さを発揮し、第32節にJ2昇格を決めると、翌第33節には優勝を成し遂げた。選手、スタッフが一丸となって1年でのJ2復帰というミッションを遂行し、大宮に笑顔が戻った。

チームはレッドブルの買収に伴い、来季からクラブ名が「RB大宮アルディージャ」に変わる。エンブレムもレッドブルの象徴でもある雄牛があしらわれたものに変更。クラブは変革の時を迎えている。

下部組織から育ってきた石川にとって、愛するクラブの名前やエンブレムが変化することは、複雑だった。ただ「よくよく考えた時に、そもそも(大宮アルディージャも)NTT関東サッカー部から変わっているな」。大宮の前身は「NTT関東サッカー部」。その前は「電電関東サッカー部」、さらにその前は「電電埼玉サッカーチーム」と時代に沿って名称を変更してきたことに気がついた。

石川自身は「NTT-」に憧れてサッカーを始めた。「物心ついた時から一番そばにあったクラブなので、その思いはずっと変わらないです。来年新しく変わっていきますけど、僕が憧れたように、大宮アルディージャがあったからサッカーが大好きになったという子どもたちに憧れてもらえるようなクラブになっていきたい」と使命感を持って戦っていく。

寂しい思いはもちろんある。それでもクラブを愛するからこそ、変化も歓迎する。「このクラブが強くなっていくことが一番ですし、本当にこのスタジアムに来てくれてるちっちゃな子どもたちが憧れてくれるのが一番幸せですし、その第1歩目という良いタイミングでこのクラブにいられたなと思う」と受け止めた。

幼い頃から主将経験は一度もないが、この激動の1年で初めてキャプテンを務めた。不思議な巡り合わせを感じている。「アルディージャのこのエンブレムで最後のキャプテンをやれたというのは、自分の中で本当に大事な宝物」とかみしめた。

レッドブルは、3~4年でのJ1昇格、2030年までにタイトル獲得を目標に掲げている。26年間親しまれた「大宮アルディージャ」の歴史は形を変えながら紡がれていく。リスから雄牛へ-。さらなる飛躍に向けてチームは進化を続ける。【佐藤成】

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 【大宮】“大宮アルディージャ”最終戦 石川俊輝「このエンブレムで最後の主将やれたのは宝物」