G大阪対神戸 優勝し天皇杯を掲げる吉田監督(中央)ら神戸イレブン(撮影・宮地輝)

<天皇杯:G大阪0-1神戸>◇23日◇決勝◇国立競技場

ヴィッセル神戸がガンバ大阪を1-0で下し、5大会ぶり2度目の優勝を決めた。

後半19分に前線へのロングボールからつないで、最後はFW宮代大聖(24)が押し込んで決勝ゴール。神戸らしい盤石な試合運びで、昨季のリーグ制覇に続くタイトルを手にした。99年元日に横浜フリューゲルスの選手として優勝した吉田孝行監督(47)は、指揮官としても頂点に立った。2連覇が懸かるJ1は残り2試合で首位に立つ。2冠の夢も広げた。

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勝利を告げるホイッスルが響いた瞬間、神戸の吉田監督はスタッフと肩を組んで喜びをかみしめた。「しぶとく、自分たちらしく勝利できた」。横浜Fに最後の優勝をもたらした選手時代に続き、指導者としても天皇杯の歴史に名を刻んだ。

前半苦しみながらも、後半14分に今大会で4戦連続得点のFW佐々木大樹(25)を投入。前線の圧力を強めたこの交代策が、佐々木へのパスから決まった5分後の決勝点につながる。過去に追い付かれた経験も生かし、終盤には的確な選手交代で1点を守り切ることに成功。状況を見極めた采配での勝利に「しぶとく、自分たちらしく勝利できた」と安堵(あんど)の表情を見せた。

天皇杯は特別な大会だった。1999年元日の第78回大会決勝。大会後の消滅が決まっていた横浜FのFWとして出場。「負けたらそこで解散というプレッシャーだった」という中で後半28分に右足で決勝点を挙げ、チームに最後のタイトルを導いた。

選手時代から備えた勝負運。それはぶれない姿勢に支えられていた。同試合で2トップを組んだ同期入団FW久保山由清(現今治コーチ)は「芯の強さと行動力があるから、なりふり構わず上を目指せる」。GKで先発した楢崎正剛(現名古屋コーチ)も「力のある選手がそろっている中でも、自分の意見を言っている姿が印象的」と振り返った。

その姿勢は指導者としも変わらない。昨季は守備の緩慢さを理由にイニエスタを構想外とした。勝つための戦術を徹底。今大会では6試合で27人の選手を起用。高強度のサッカーが浸透し、メンバーを入れ替えても戦える集団に進化させた。

選手でも監督でも天皇杯優勝を成し遂げたのは、Jリーグ創設以降で8人目。決勝での得点者としては初となった。神戸はこの後も、リーグ連覇とアジア制覇を懸けた戦いが控える。祝勝会もなく走り続ける指揮官は「タイトルを取れる監督を目指してやっている。まだまだ向上心をもってやっていきたい」。常勝軍団へ、早くも次のタイトルへ目を向けた。【永田淳】

◆吉田孝行(よしだ・たかゆき)1977年(昭52)3月14日生まれ、兵庫・川西市出身。93年に日本で開催されたU-17世界選手権(現U-17W杯)出場。滝川二高から95年に横浜Fに加入。合併とともに横浜に加わった。00年に大分、06年に横浜へ移籍。神戸では08年からプレーして13年に現役引退。J1通算356試合53得点。引退後は神戸やJ2長崎で監督を務め、22年6月から神戸で3度目の指揮を執っている。監督として23年にJ1初優勝。

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 【天皇杯】神戸が5大会ぶりV 吉田監督は横浜Fの選手時代に続く制覇 決勝得点者では初の快挙