町田の黒田剛監督は笑顔ながらに講演する

FC町田ゼルビアの黒田剛監督(54)が17日、町田市サッカー協会主催の指導者懇親会の場で講演を行った。町田市内の会場で、小学生年代の指導者を中心とした約80人の参加者を前に、自らの見解や経験談を1時間ほど話した。

講演は質疑応答の形式で進行。青森山田高サッカー部を常勝軍団に育てる過程でのエピソードを交えながら、小学生年代での指導についての見解や、チーム作りのマネジメント論などを限られた時間の中で伝えた。

例えば小学生の指導者になった場合、何を大切にしますか? と問われるとこう回答した。

「低学年とかサッカーボールを楽しむ、遊ぶところはいろんなボールフィーリングの中で成長するべきだと思う。ただ5、6年生になって自分が高いレベルでやりたい、全国大会を目指すというのであれば、サッカーをやるべき目的はスキルアップもそうですが、勝つことだと思うんです。勝つこと求めずしてスキルアップはないので。年齢によって(指導方針は)大いに違うということを念頭に置いた上で、勝つために何をしなきゃいけないか、どんなトレーニングをするのかというのは指導のベースになるのではないかと思います」

また、高校サッカーからプロの監督に転身し、プライドの高いプロ選手を指導する上でのポイントについてはこう回答した。

「自分自身、プロプロしていないというか、この世界に入ってまだ(2年目と)日もたたないので、あんまり選手に対して忖度(そんたく)がないと思います。自分で言うのもなんですが、ワールドカップに出た経験を持とうと、外国籍であろうと、またはベテランであろうと、FC町田ゼルビアの掲げるコンセプトとか、その基準に達していたら試合に使わないと、それは選手みんなの前で常に言っています。実績としての根拠はあるかもしれないけど、今ここでやれる根拠にはならない。リスペクトはしつつも、何か手を差し伸べたり、何か基準を下げたりなんてことは絶対にしないし、この基準に達してこなかったら、どんな選手でも試合では使わないと言っています。52歳でわざわざプロに転身して、青森山田で退職まで13年あったにも関わらず、それをすべて譲ってこの世界に入ったということは、やっぱりそういうところで妥協したくないっていうところあった。そのへんの覚悟というのは、選手たちに媚びを売ることでもないし、忖度することでもない。やっぱり町田で結果を出すために、ゼルビアがJ1に行くこと、優勝すること、このチームが日本でトップを取ること、ACLに出るっていうことがこのクラブの目標です。妥協してたら何のために来たのか分からない、という自分には強い思いがあります」などと熱い言葉を重ねた。

指導者たちはその言葉に耳を傾け、共感するようにうなずいていた。

あっという間の1時間。人前で話すことが得意な黒田監督だけに、今回の講演も手慣れたものだった。終了後、今回の行動についてこう説明した。

「ざっくばらんにというか、日常も指導において悩んでいること、不安とかあると思うので、何が正解というものはないですが。J1の監督という立場からいろんなものを、子どもたちを指導する人たちにメッセージを送れたらというのも一つの目的としてあるし、また町田に来て2年目で、何か町に貢献したい、この町に育つ子どもたちのために何か協力したいというのが根底にあります。幸いにもリーグ戦が3週間空いているので、こういう近い距離で町の指導者と交流して、我々にも応援してもらいたいなというものもあります」

終始和やかな表情だった黒田監督。シーズン最終盤を迎え、優勝の可能性もわずかながら残す中、気持ちのリフレッシュにもつながったようだ。

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 【町田】黒田監督、地元少年指導者を前に熱弁「52歳でわざわざプロに転身して妥協したくない」