日本対オーストラリア 力投する日本先発の井上(撮影・垰建太)

<ラグザス presents 第3回プレミア12:侍ジャパン9-3オーストラリア>◇13日◇バンテリンドーム

侍ジャパンのニューカマーが、大役を果たした。井上温大投手(23)が「ラグザス presents 第3回WBSCプレミア12」の侍ジャパン開幕投手を務め、オーストラリア打線を5回まで無失点に封じた。6回先頭に喫したソロ弾を許すなどして途中降板。それでも5回0/3を5安打2失点で勝ち投手になった。追加招集から初戦を託されたベビーフェイスが重圧をはねのけ、大人の階段を一つ駆け上がった。

   ◇   ◇   ◇

自信が若き左腕の体中からにじみ出た。井上が今季のMLBドラフト1位バザナに力勝負を挑んだ。1回先頭、直球で詰まらせながらも中前に落とされたが、3回2死の第2打席でも攻めた。内角直球で追い込み、149キロ直球で空振り三振。最小サイズで頼んだ55センチの帽子が脱げてしまうほどの躍動感で「ゾーンに初球から大胆に投げようと。カウント有利に進めることができました」と貫いた。

シンデレラストーリーのような1年間だった。昨季まで1軍通算わずか1勝。壁は高かった。9月3日DeNA戦で1回0/3を7失点と大敗した。2軍では防御率0点台で7勝無敗と無双するほど状態は良かったからこそ、現実を受け止められなかった。「自信持って挑んで7失点。どうやって自信を持てば良いんですか。何すればいいか分からないです」とネガティブな思考が頭を支配。戦力外もちらつき、中継ぎ転向も考えた。

工夫と結果で迷路から脱出した。対戦相手の1番から9番まで、どう打ち取るかをイメージしながらノートに書き込んで準備。結果が伴い始めると、自信はどんどんと深まり、大きくなった。国際試合でも変わらない。オーストラリアの情報を頭に入れつつ、ボールに意図を込めた。「投げる前にカウント取るのか、見逃してストライク取るのかとか、明確にしてます。意思があるボールを投げられている」と胸を張った。

約1年前には想像もできなかった、侍ジャパンの開幕投手のマウンドで役割を全うした。6回先頭、ボヤースキにソロを浴び、バザナに右前打を浴びて降板も、6回途中8奪三振2失点と上々の侍デビュー。「普通だったら味わえない経験をできている。1勝できた自信を持って次も投げたい」と階段を上った。ベビーフェイスに風格すら漂い始めた背番号97。日の丸を背負っても、積み上げてきた自信は揺るがない。【小早川宗一郎】

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 【プレミア12】開幕投手・井上温大が大人の階段駆け上がる「大胆に投げようと」6回途中2失点