清水の秋葉忠宏監督(2024年9月22日撮影)

<明治安田J2:栃木0-1清水>◇27日◇第36節◇カンセキ

清水エスパルスの秋葉忠宏監督(49)がJ1復帰に導いた。

今年で就任2年目。コーチから監督に就任した昨季は最後に苦杯をなめた。19位のチームを2位まで引き上げて迎えた最終節のアウェー水戸ホーリーホック戦。勝てば昇格の試合で引き分け、2位から4位に転落した。東京ヴェルディとのJ1昇格プレーオフ決勝も後半追加タイムに追いつかれて終戦。試合後は「何をしたか覚えていない」と放心状態で、「3日4日は寝られなかった」。

こみ上げてくる感情は後悔の念だった。「俺じゃなかったら昇格できたんじゃないか」。大好きなお酒も「飲む気にすらならなかった」という。それでも、昨年12月に続投を要請されると、覚悟を決めた。

「J2優勝でJ1に戻る」。再建に掲げた今季のテーマは勝負強さ。1ゴール、勝ち点1に泣いた昨季の雪辱を誓い、選手には厳しさを求めた。精神統一を目的とした座禅会にも参加したり、クラブハウス内のロッカーの掃除も選手に行わせた。練習では「最後の一歩までやり切るとか、ずるををしないとか。当たり前のこと当たり前にできるように言った」。

今季は開幕連勝スタートを切ると、4節以降は3位以内をキープ。追求した勝負強さはリーグ終盤の結果に表れた。昇格レースを占う9月は3勝2分け。5試合中4試合で先制される劣勢で勝ち点11を積み上げた。指揮官は「選手が去年の悔しさを忘れずに毎日毎日やり続けてくれた。その成果が勝負強さにつながった」と目を細めた。

「ONE FAMILY」。秋葉監督がよく口にする言葉がクラブスローガンの一部になった。「静岡はフットボールが生活の一部として根付いている。サポーターも日本一だと思う」。理想はクラブに関わる全ての人が1つになること。今夏には選手や社員、その家族も誘ってバーベキューを開催した。総勢200人以上が集まり、結束力を高めるきっかけになった。

「1つになった時のチームは強いし、説明がつかない力が出る」。今季は一時アウェー4連敗と苦戦を強いられたが、ホームでは13勝3分け1敗と圧倒的な強さを誇った。敵地で落とした勝ち点を「わが家」とも言えるホームでカバーした。「サポーターの力は大きい。アイスタでは絶対に負けないという雰囲気を作れたことは本当に大きかった」と誇示した。

クラブOBではなく、自身を「外様」と言う。ただ、外様だから言えることもある。「去年きた時に何か暗い雰囲気があったし、負のオーラみたいな空気が漂っていた。僕が現役のころのエスパルスはサッカー王国のクラブで、技術もあって、日本代表もたくさんいたイメージ。それが中に入ったら全然違う。その全てを変えたかった」。

変化させれば、時には痛みを伴い、反感も買う。それも全て責任を取る覚悟で臨んできた。現場を律し、フロントやクラブの社員には団結することの大切さを訴えた。信頼を置くコーチングスタッフ、クラブOBにも積極的に助言を求め、サポーターをファミリーと呼んで共闘を呼びかけ続けた。秋葉監督は言う。「真剣に悩んでくれたり苦しんでくれたり、パワーを与え合えるのがファミリー。クラブで仕事をしていれば選手や監督は、いずれ変わるけれど、脈々と受け継がれていくものは大事だと思っている」。

自身は昨年から静岡で単身生活を送っている。正真正銘の家族とは離れ、1人闘ってきた。オフは家族との時間を大切にしているといい、「癒やしと元気をもらって、また頑張ろうという気持ちになれる」と感謝した。

「一家の大黒柱」として情熱を注ぎ、クラブを改革した。わが子のように愛し、時には厳しく接してきた選手たちも一回り成長した。来季は3シーズンぶりのJ1。熱血漢のもとで生まれ変わった清水が、トップリーグに戻ってくる。【神谷亮磨】

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 【清水】熱血漢の秋葉監督がJ1復帰に導く「ONE FAMILY」の精神でクラブを再建