リーグ優勝し、歓喜の輪の中で笑顔を見せるドジャース大谷翔平(後列右から2人目)(撮影・菅敏)

<ナ・リーグ優勝決定シリーズ:ドジャース10-5メッツ>◇第6戦◇20日(日本時間21日)◇ドジャースタジアム

【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)20日(日本時間21日)=斎藤庸裕、四竈衛】ドジャース大谷翔平投手(30)が、メジャー7年目でワールドシリーズ進出を果たした。メッツとのリーグ優勝決定シリーズ第6戦に「1番DH」で出場し、4打数2安打1打点。先制された直後の初回先頭で安打を放って暗雲を振り払って逆転劇の口火を切ると、6回にはリードを広げる適時打でシリーズ突破に貢献した。パドレスとの地区シリーズから下馬評が低かった中、大谷を中心とした反骨精神で次々と強敵を下した。25日(日本時間26日)からは43年ぶりとなるヤンキースとのプレミアム頂上決戦。東と西の名門球団が激突する最高峰の舞台に、いよいよ大谷が立つ。

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大谷は満面の笑みで、念願のトロフィーを持ち上げた。隣で喜びを分かちあった山本と一緒に掲げた。「初めてのトロフィーだったので。持っていいよと言われて、いい記念に。ワールドシリーズのチャンピオンのトロフィーも掲げられれば最高だなと思います」。ベッツから受け取り、大事に見つめながら、頭にひょこんと乗っけるおちゃめな姿もあった。記念撮影の真ん中で、夜空に高々と上げた右手。チームの顔であり、中心選手として、リーグ優勝の瞬間を味わった。

大谷の存在が、逆境から頂上決戦にまで押し上げた。今季、両リーグ最高勝率でレギュラーシーズンを終えたものの、当初はポストシーズンでの下馬評が低かった。投手ではエース右腕グラスノー、2年目の勝ち頭ストーン、ベテラン左腕カーショーらが故障で離脱。先発の駒不足に加え、野手では中軸のフリーマン、堅守で貢献してきたロハスらの状態が悪化した。MLB公式サイトの勝敗予想などでは、ド軍の突破は難しいとの見方が続いた。

マイナス評価を、反骨精神で覆した。投打に安定感があった宿敵パドレス、ワイルドカードから勝ち上がってきたミラクル・メッツを次々に撃破。地区シリーズ第4戦でパ軍を圧倒した試合後、レジェンド左腕カーショーが言った。「僕らは、とても逆境に強いチーム。皆それぞれが、互いを信じている。成し遂げられると、強い信念がある」。その中心にいたのが、大谷だった。今季だけでなく、これまで何度も苦難をはねのけ、懐疑的な見方や常識を打ち破ってきた。各シリーズの節目で「必ず勝てる」「十分勝てる」と信じ、力強い言葉とパフォーマンスで鼓舞。個々の力が強い集団に、大谷が醸し出す不屈の精神が加わった。

この日も大谷の一打から、難敵攻略への突破口が開いた。第2戦で苦戦した左腕マナイアから第1打席で中前打。先制された直後に「先頭打者として流れを戻せる仕事がしたい」と集中し、4番エドマンの適時二塁打で逆転につなげた。ホームに生還後はいつも通り、同僚に情報共有で耳打ち。3回に再びエドマンの2ランなどでマナイアをKOした。WS進出を決め、記者会見の冒頭で言った。「苦しい試合も多かったですし、全員で本当につかみとった素晴らしいゲームが多かった」。1人の力だけではない。常勝軍団と不屈の大谷の融合が、頂点を目指す大舞台への扉を開いた。

<ドジャース、大谷翔平記録あれこれ>

◆日本人選手のワールドシリーズ進出 20年筒香(レイズ)以来4年ぶり。大谷はメジャー7年目で初進出になるが、出場すれば日本人選手では17年に6年目で初出場のダルビッシュ(ドジャース)を抜いて最も遅いワールドシリーズデビューになる。山本は渡米1年目。1年目で出場すれば20年筒香以来で、投手では07年の松坂と岡島(Rソックス)に次ぎ17年ぶり3人目。

▼ドジャースはリーグ優勝決定シリーズ6試合で46得点と打線が活発だった。PSで同一シリーズの総得点46はナ・リーグ最多。失点は26で、PSで1シリーズの得失点差プラス20は、4位タイ。ドジャースは17年の同シリーズに次いで2度目の球団最多タイ。

▼ドジャースとヤンキースのワールドシリーズ(WS)は43年ぶり12度目(ヤンキース8勝、ドジャース3勝)で、PSの顔合わせとしてはWS以外も含めてヤンキース-ガーディアンズの7度、ヤンキース-ジャイアンツの7度に大きく差をつける最多。

▼WS最多出場はヤンキースの41度、ドジャースの22度は2番目(3位はジャイアンツの20度)。地区シリーズ開始の69年以降、各リーグの第1シード同士の対戦は、20年のドジャース-レイズ以来13度目。

▼大谷が2安打1四球で3出塁。これでリーグ優勝決定シリーズでは通算17出塁。ポストシーズン(PS)同一シリーズ17出塁は、今年の同僚マンシーと並んで球団史上最多。20年ワールドシリーズでのシーガーら3人の15を抜いた

▼ドジャース大谷(54本)とヤンキース・ジャッジ(58)はともに今季公式戦で50本塁打を超えている。MLBのラングス記者によると、両軍に50本選手がいるワールドシリーズは初めて。両リーグの本塁打王対決は1921年ルースとケリー、28年ルースとボトムリー、36年ゲーリッグとオット、37年ディマジオとオット、56年マントルとスナイダー以来6組目。

▼大谷もジャッジもリーグMVPが有力だが、MVP対決となれば12年ポージー(ジャイアンツ)とカブレラ(タイガース)以来、地区シリーズ開始の69年以降では7組目。MVP選手のWS優勝は18年レッドソックスのベッツ(現ドジャース)以来、69年以降13人14度目となる。

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 大谷翔平「必ず勝てる」「十分勝てる」常勝軍団を鼓舞、反骨精神でワールドシリーズの扉開く