巨人対DeNA DeNAに勝利しファンの声援に応える巨人井上(撮影・たえ見朱実)

<セ・CSファイナルステージ:巨人4-1DeNA>◇第4戦◇19日◇東京ドーム

巨人井上温大投手(23)が、CS初登板で最高の先発マウンドを果たした。ファイナルステージ3連勝中のDeNA打線を相手に、6回1安打1失点と好投した。許した安打は6回1死で戸柱に浴びた一時同点のソロ本塁打だけ。そこまで1人の走者も許さない完全投球で封じ込めた。前橋商(群馬)時代から変わらず、プロ入り後もマウンドから走ってベンチに戻る5年目左腕。高校生時代のような負けたら終わりの局面で躍動した。

   ◇   ◇   ◇

お立ち台から、井上が最高の景色を見渡した。その姿は初々しく、でも頼もしかった。「1球、1球に集中して、何とか後ろのピッチャーにつなぐように投げました。自信がすごくついた。野球人生ですごく大きな1試合になったと思う」。6回1安打1失点。負けたら終わりの大一番で、DeNA打線を制圧した。

前橋商時代から染み付く習慣を今も継続する。イニングを投げ終え、マウンドからベンチに向かう時、井上は歩かない。走って戻る。「高校生って攻守交代で走るじゃないですか。それが抜けないんです。今はプロですけど、でもいいかなと思ってて。若いですし、ハツラツとチームに勢いづけようと思って」。5年目左腕が貫く美学だ。

マウンドから投げ込んだ球も走っていた。3回は先頭森敬を147キロ直球で空振り三振。続く戸柱、ジャクソンと3者連続三振で仕留めるなど計6奪三振。フライアウトも6つと、直球で押し込んだ。

試合前、いつも以上に多くの人から「頑張れよ」と声をかけられ、緊張にも包まれた。ただ、試合が始まると、自然と集中力を保てていた。唯一の安打だった6回1死から戸柱に浴びた一時同点となるソロの後も慌てない。「6回で1対1ならばジャイアンツは確率的に勝てる」。仲間を信じ、冷静だった。

今季は6月から先発ローテに定着し、8勝をマークした。規定投球回には未達ながら防御率2・76と飛躍した。前橋商3年だった19年入寮前にドン・キホーテで3000円で購入したスーツケースを今も遠征で使用する。「僕、けっこうコスパいいですよ。僕の中でも次に買うスーツケースも3万円から5万円ぐらいでいいかな」。今季推定年俸は670万円の左腕が、最高の仕事で、価値ある白星をチームに呼び込んだ。【上田悠太】

▼ポストシーズン初登板の巨人井上が、6回1死までパーフェクトに抑えた。プレーオフ、CSで先発し、5回以上を完全に抑えたのは07年1S<1>戦川上(中日=5回1/3)08年2S<5>戦涌井(西武=6回2/3)14年1S<2>戦上沢(日本ハム=5回1/3)18年1S<2>戦菅野(巨人=6回2/3)に次いで5人目。このうちCS初登板は川上、上沢に次いで3人目。負ければ敗退の試合でマークしたのは井上が初めて。

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 【巨人】年俸670万円左腕・井上温大が最高の仕事「僕、コスパいい」高校生のように走って交代