優勝トロフィーを手に喜ぶモラタ(中央)らスペインのメンバー(AP)

<欧州選手権(ユーロ2024):スペイン2-1イングランド>◇14日(日本時間15日)◇決勝◇ベルリン

スペインが3大会ぶり、史上最多4度目の欧州王者に輝いた。FWミケル・オヤルサバル(レアル・ソシエダード)の決勝点でイングランドに2-1と競り勝った。今大会7戦全勝の完全優勝となり、個人賞も含めタイトルを総なめ。大会最年少記録を次々と樹立した17歳FWミケル・ヤマル(バルセロナ)はこの日も先制点に絡み、最多の4アシストで最優秀若手賞を受賞。最優秀選手はMFロドリ(マンチェスター・シティー)が選出された。賞金も2825万ユーロ(約48億250万円)を獲得した。

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失っていた「無敵艦隊」の看板を取り戻した。12年ぶりの欧州制覇。スペインのメンバーは優勝セレモニーで空から降り注ぐ金色の紙吹雪を笑顔で見上げた。

楽天的なお国柄のスペインが、1次リーグ3試合を無失点で突破したのは初めて。従来とは異なる姿で7戦全勝の完全優勝を果たした。チームのアイコンとなったヤマルは決勝前日が17歳の誕生日。「夢のようだ。スペインに戻ってファンのみんなとお祝いするのが楽しみ。最高のバースデープレゼント」と喜んだ。

従来とは異なる姿-。最大の殊勲者はこのヤマルでなく、デラフエンテ監督。このリアリストによってスペインは生まれ変わった。同国のアイデンティティーと言われた「ポゼッション至上主義」を捨てたことが成功のもとだった。

10年以上も前から脈々と続いた「ティキ・タカ(テンポ良くボールを回す)」。中盤に希代の名手シャビ、イニエスタらを擁し、08年欧州選手権、10年W杯、12年欧州選手権と主要国際大会を3連覇した。ただ戦術のトレンドは時代とともに攻略されるもの。22年W杯でボール支配にとらわれたルイス・エンリケ監督は敵陣でスペースを作り出すことに苦しみ1次リーグで日本に敗れ、決勝トーナメントでも1回戦でモロッコに敗れる憂き目に遭った。

デラフエンテ監督は無理にボールを保持せず、逆に相手に持たせることで相手の背後のスペースを突いた。ウイングを重視し、右にヤマル、左にニコ・ウィリアムスを配置。後方からカルバハル、ククレジャという攻撃的なDFを絡ませるサイドアタックを構築した。イングランド相手に狙い通りの2得点。決勝点は左のククレジャからオヤルサバルへの速攻で仕留めた。

無敵艦隊の長は「私の意志は代表監督を続けることだ。スペイン連盟もそれを望んでいるのであれば、契約書にサインする」と続投を宣言。さっそく2年後のW杯制覇へと目を向けた。

○…イングランド主将のケーンは肩を落とし、ベリンガムは肩をふるわせ涙を流した。66年の自国W杯以来、58年間も主要国際大会での優勝がない。前回も決勝でイタリアに敗れた。今回こその期待が大きかっただけに失望感にさいなまれた。ケーンは3得点で6人いる大会得点王に輝くも、18年W杯をはじめ得点王になるとチームは優勝できないジンクス。8年間指揮しながら一線を越えられないサウスゲート監督は「あと6~8年プレーできる若い選手がたくさんいる。今は苦しいけど、立ち直れないわけがない」と前を向いた。

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 【ユーロ】スペイン従来の「ポゼッション至上主義」捨て完全V デラフエンテ監督は続投宣言