第7戦までもつれた日本シリーズは連日、満員の観衆で盛り上がった。新型コロナウイルスの感染拡大防止という課題に向き合って3年目。7月中旬以降の「第7波」を乗り切り、各チームがレギュラーシーズンの143試合をきっちり消化したからこそ迎えられた最終盤だった。 今季の総入場者数は以前の水準に近い2107万1180人(1試合平均2万4558人)。日本シリーズ終了後、日本野球機構(NPB)の井原敦事務局長は「声出し応援はまだ無理だったが、スタンドはコロナ前と同じ状況。ようやくここまできたかと感無量だった」と実感を込めた。 ポイントになったのは第7波に伴い離脱者が急増した夏場以降。各球団は2軍からの選手補充や、感染から復帰した選手がすぐに試合に出ることで、中止を最小限にとどめた。各チームの事情だけを考えるなら、より多くの試合が中止になっただろう。だがNPBと12球団は、「試合挙行」にこだわった。 現場は必死の対応。オールスター戦前後の巨人は1軍と2軍で同時に集団感染が起き、急きょ育成選手の支配下登録までしたが、選手が足りず2カードが中止。DeNAは悪天候による中止も重なり、9月は試合のない日が3日だけという過密日程をこなした。オリックスとヤクルトは主力の大量離脱でぎりぎりのチーム編成となり、苦難を越えての日本シリーズだった。 斉藤惇コミッショナーは規制なくシーズンを続ける米国の例を出しつつ、「お金のために病気を広げていいのかという反論があることも承知の上だが、経済や社会構造をどう保つかが重要」と主張した。秋には日本代表の強化試合が予定され、日本シリーズまでの日程は動かせないという事情もあった。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕日本シリーズ第1戦、傘を掲げて応援するヤクルトファン=10月22日、神宮球場