【ドーハ時事】21日に行われた1次リーグB組の初戦。イランの選手は、イングランド戦前に国歌を歌わなかった。国歌が流れる間、整列した先発11人は口をつぐんだまま。国の威信を懸ける舞台では、異様な光景に映った。 イラン国内の大規模な抗議デモを支持するための行動だった。9月16日に頭部を覆うスカーフの「不適切な着用」を理由に連行された女性が、治安当局の拘束下で死亡。当局による虐待を疑う市民が始めた抗議活動はイラン全土に広がる大規模なものとなり、これまでに多数の死者が出ている。 AFP通信などによると、選手は試合を控え、国歌斉唱を拒否する可能性を示唆していた。チームはカタールへ出発前に強硬派のライシ大統領と面会。デモが激化する中で、選手が大統領に頭を下げている写真が出回り、SNSなどで抗議の声を受けていた。 ロイター通信はイランの国営テレビが問題の場面を放送しなかったと報道。デモを支持する姿勢を示した選手らについて「国歌を歌わなかったチームを誇りに思う。あの歌は国ではなく、体制のためのものだから」との匿名のイラン人の話を伝えた。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕試合前に演奏された国歌を歌わず、沈黙を貫いたイランの選手たち=21日、ドーハ(AFP時事)