さまざまな経歴のサッカー指導者がいるとはいえ、11カ国のプロリーグでプレーした経験がある人はそういない。斉藤誠司さん(36)は16歳の時、所属していたJ1柏の下部組織も、高校も辞めた。周囲の反対を押し切り、ブラジルへ渡る。 世代別日本代表の試合を見ていた代理人に誘われたのがきっかけで、名門サンパウロのユースへ。言葉も知らない世界へ飛び込んだ。「分からなくてもコミュニケーションを取った。サッカーの技術よりも大事だった」 次第に溶け込み、1年後にプロ契約。しかし1年でクビに。約3カ月間、片っ端からクラブの社長や監督に接触を試み、自分を売り込んだ。チームを転々とし、ブラジルで約7年間を過ごした。 その経験が後に生きる。代理人の仕事も始め、自ら交渉してポルトガル下部リーグのクラブと契約。シンガポールやポーランド、インド、バーレーンなどを渡り歩き、昨年はワールドカップ(W杯)カタール大会1次リーグで日本が対戦するコスタリカでプレーした。 ブラジル時代からアカデミーを運営していたこともあり、2019年にさいたま市内で「セジニョサッカーアカデミー」をつくった。他人にはない経験を基に「一人一人の性格、レベル、メンタルを分析して、それぞれにあった指導をしている」。1期生は現在中学3年生。海外に多数パイプがあり、育成からマネジメントまで担えるのが強みだ。「長期的には日本代表としてW杯に出したい」と思い描く。 自身も選手としてはあくまで「休業中」だ。「(次は)アフリカを狙っている」。12カ国目も諦めていない。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕シンガポールのリーグでプレーする斉藤誠司さん(右)=2012年3月、シンガポール(本人提供・時事) 〔写真説明〕セジニョサッカーアカデミーで子どもたちを指導する斉藤誠司さん=5月、さいたま市内(本人提供)