日本のフィールド選手では前人未到となる4度目のワールドカップ(W杯)。長友佑都(F東京)が「誰よりも強く」思い続けてきた舞台に至る道のりは、順風満帆ではなかった。 昨年9月、10年以上過ごした欧州から古巣F東京へ復帰。W杯アジア最終予選を見据え、体調面などで利点があることも決断の理由だった。だが、苦戦したチームと同様に、左サイドバックでもがいた。攻撃参加が少ないなどパフォーマンスが上がらず、その間に左サイドバックには東京五輪世代の中山雄太(ハダースフィールド)が台頭。ベテランの衰えを指摘する声も聞かれた。 逆風の中でこそ力を出してここまで走ってきた。今年2月のサウジアラビア戦。吹っ切れたように気迫あふれるプレーを見せ、追加点を生むアシストを記録した。苦しかった時期を振り返り、「批判はガソリン。僕の魂に火を付けてくれた。その苦しいことを乗り越えるにつれて、自分も精神的に強くなった」。 ブラジルとの6月の強化試合では右サイドバックに入り、王国の新星ビニシウスを相手に対応力の高さを示した。9月のエクアドル戦でも粘り強い守備で存在感を発揮。いつしか限界論は消えた。 成長し続けようとする姿勢こそが真骨頂。「あいつは誰だ、あの36歳は化け物みたいに走るなと(言われるように)」。世界を驚かせるべく、そして故障でW杯欠場となった中山の思いも背負い、不屈の男はピッチに立つ。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕エクアドル戦の前半、競り合う長友(左)=9月27日、ドイツ・デュッセルドルフ