【リバプール(英国)時事】英リバプールで開幕した体操の世界選手権で29日、ロシアによる侵攻を受けるウクライナの男子イリア・コフトゥン選手(19)が公式練習で「STOP WAR(戦争やめて)」と書かれたシャツを着た。国際体操連盟(FIG)は試合会場で政治的なメッセージを送ることを禁じており、チームは注意を受けた。 練習後、通常のユニホーム姿で取材に応じたコフトゥン選手はシャツのことには触れず、「最も大変なのは精神面。家族が無事でいるかを常に心配する中で、大会の準備をしなければならなかった」と語った。2月下旬の侵攻開始後は母国に帰れず、現在はクロアチアで練習しているという。 体操では、ロシアの男子選手が自国軍を象徴する「Z」印を胸につけて3月の国際大会に出場し、1年間の資格停止処分を受けた。コフトゥン選手を処分しない理由について、FIGの渡辺守成会長は「ルール上は許可されていないが、細かいことを言って憎しみを広げるのは良くない。戦争が終わった後に皆が仲良くなれる状況をつくることが大事」と述べた。 コフトゥン選手は昨年の世界選手権(北九州市)の個人総合で銅メダルを獲得した。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕練習後、取材に応じるウクライナのコフトゥン選手(左)=29日、英国・リバプール