不穏な空気が漂った。川崎は後半早々に立て続けに失点を喫し、清水に逆転を許す。直近3試合は先制しながら勝ち切れず、前節は札幌に逆転負け。その残像もあったはずだが「信じることはやめちゃいけないと思った」と小林。思いは最後に通じた。 選手の立ち位置を微調整し、押し込まれる展開を徐々に盛り返す。1―2の後半31分、右CKに山村が後退しながら頭で合わせ、同点ゴール。さらにその2分後、山村の浮き球をマルシーニョがゴール左から懸命に折り返す。フリーの小林が執念で押し込んだ。 昨季まで6季連続で2桁得点の小林だが、今季はまだ5点目。2017年に得点王とMVPに輝いた35歳は途中出場が増え、本職ではないウイングに回ることも。それでも3試合連続ゴールとし、「結果にこだわってやっている」。先制点の遠野や山村を含め、出場機会に恵まれない選手も腐らず努力を重ねてきた。 首位の横浜Mとは残り3試合で勝ち点5差となり、逆転3連覇へ望みをつなぐ白星。この日は新型コロナウイルス感染拡大後で初となるホームでの声出し応援が復活し、サポーターの声援にも背中を押された。「奇跡という言葉がある以上、可能性はある。信じ続ける」と鬼木監督。土俵際からの逆襲を誓った。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕後半、頭でゴールを決める川崎の山村(上)=8日、等々力 〔写真説明〕後半、勝ち越しゴールを決める川崎の小林(右)=8日、等々力