リンクでも、その外でも最高峰を感じた。北米アイスホッケーリーグ(NHL)、バンクーバー・カナックスのプレシーズンキャンプに招待選手として参加した日本代表FW平野裕志朗(27)は、試合に出られなかった。数日間の練習のみでトライアウト契約を解除され、「またここから始まる勝負」。そう言って、厳しさをかみしめた。 キャンプ登録はトッププレーヤーも含めて59人。初日だった9月22日のチームディナーの前に、平野を含む8人がまとめて監督に呼ばれた。「その時点で扱い方は受け止めてはいた」。けが人などが出なければ紅白戦にも出られず、参加は練習のみ。そう告げられた。 前日の21日、監督やコーチのいない非公式の練習で45分間の紅白戦になり、平野はJ・T・ミラー、ブロック・ボーザーとFWラインを組んだ。2人合わせてNHL通算290ゴール。アシストをマークしたものの「リンクで主役になれていない。自分は中継地点だった」と感じさせられた。 パックを持つ時間は短く、攻撃のフィニッシュでパスが出てこない。そんな雰囲気が漂った。NHLを何より感じたのは自陣から攻め上がるブレークアウトの局面。「流れができなかったときの選択肢の切り替えがスムーズ過ぎる。イメージ通りのホッケーを淡々とやっている」。傘下のAHLアボッツフォードでも昨季、上位ラインでNHL経験者と組んだが、それとはレベルが違った。 25日のプレシーズン初戦はチームを分けて2試合が組まれたが登録されず、スタンドから見た。翌日にゼネラルマネジャーからAHL行きを通告され、少しの違いを意識してほしいと言われたという。「もう少しの速さなのか、ホッケーIQ(知能指数)なのか」と解釈した。 FWはセンターと左右ウイングの3人が一組で4ライン。ほぼ固定されている陣容に割って入るには「何かピカイチで目立たないと。探そうと思えば選手はいくらでもいる」。まずは数字。AHLでゴールとアシストを合わせて試合数より多いポイントを目指し、その上で「守れるフォワード」に。NHLに近いところまで足を踏み入れたからこそ、そう思う。 (時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕2021~22年シーズンにアイスホッケーのアメリカン・ホッケーリーグ(AHL)、アボッツフォードでプレーする平野裕志朗(Abbotsford Canucks提供)