プロ野球セ・リーグはヤクルトが29年ぶりの連覇を果たした。2020年に2年連続最下位の屈辱を味わった後、躍進を遂げた背景には、高津臣吾監督の定石にとらわれない起用法と育成手腕があった。 ◇「ぬるい」練習 20年に就任した高津監督はまず、練習時間を大きく減らした。特に春季キャンプは他球団と比べると顕著で、夕方前には全体練習を終える。関係者からは「ぬるい」という声も出たが、監督には「絶対にけがをさせてはいけない」という譲れない優先事項があった。 投手の体調管理には昨季以上に目を光らせた。許容範囲だった3連投もほとんどさせず、救援陣が肩をつくるブルペンでの球数も制限。試合ごとに当番制を敷くことで、休養日も設けた。先発も可能な限り、基本の中6日よりも長い登板間隔にするようにやりくりした。 今季、主力のけが人は長期離脱となった奥川や、中村、サンタナくらい。新型コロナウイルス感染を除けば、かなり抑えられていた。 監督が信頼を置く伊藤智仁投手コーチも同じ考えだ。伊藤コーチによると、選手は総じて無理をする傾向が強く「大丈夫と言ってしまう」。自身も高速スライダーを武器に活躍したが、登板過多がたたって選手生命を縮めた経験がある。「昔は投手は走れ、走れの時代だったけど、休養をしっかり取らないと強い体はできない」との信念がある。 伊藤コーチは母親のような立場をイメージしながら指導する。元中日監督の落合博満氏から伝授されたと言い、「お母さん目線の方が細かいところに目がいくのかな」。投手らは相談しやすい空気を感じているようで、関係性は良好だ。 野手もケアに対する意識が高まった。ヨガを取り入れたり、睡眠の質を気にしたり、ドリンクを変えたりと、各自が工夫を凝らして体調を管理し、シーズンを戦い抜いた。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕プロ初勝利を挙げ、高津監督(左)に祝福され、笑顔を見せるヤクルトの久保=9日、神宮球場 〔写真説明〕セ・リーグ優勝を決め、記者会見するヤクルトの高津臣吾監督=25日、神宮球場(代表撮影)