9月11日のDeNA20回戦で、村上がほえた。本塁打を打ったからではない。1点リードの九回2死二塁で、頭上を越えそうな強烈なライナーを好捕した直後だった。三塁付近で力強く拳を握り、表情にはアーチを架けた時以上の感情があふれていた。 史上初の5打席連続本塁打に、王貞治と並ぶ日本選手最多の55号。連日のようにホームランの話題が取り上げられたが、本人はあくまでフォア・ザ・チーム。口癖のように「チームの優勝が第一」と話してきた。 高津監督は「内野ゴロでも点が取れることをすごく喜ぶ選手」とみる。「野球という団体スポーツで、みんなで勝つんだ、という喜びを感じているところを評価している」。そう言って村上の人間性を高く買っている。 7月に山田や塩見ら多くの主力が、新型コロナウイルスに感染して離脱。チームの窮地に、村上は覚悟を新たにした。「個人の力というのは小さい。より一致団結することで、力は大きくなる。その中心に僕がいるということは自覚している」 チームは負けが込み、高津監督も思わず弱音を吐くことがあった。それでも村上はムードを盛り上げようと、味方が挙げた1点を祝福し、投手が一つのアウトを取るたびに喜んだ。本塁打が勝利に結びつかない試合もあったが、7、8月は5打席連発を含む計20本塁打と、集中力を保った。 1試合を除いて全試合4番でスタメン出場を続けた村上の貢献は言うまでもない。「継続することは難しいが、連覇を目指したい」。開幕前に掲げた目標を実現させる実力と風格が、22歳の主砲には備わっていた。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕2年連続9度目の優勝を果たし、喜ぶヤクルトの村上(左端)ら。右から2人目は高津監督=25日、神宮