取組直前の北勝富士の様子が、いつもと少し違っていた。自身の体や顔を激しくたたき、気合を入れる動きは抑え気味。優勝争いに踏みとどまるため、勝負に徹した。 翔猿との3敗対決。立ち合いで低く当たってきた相手を左から突き落とし、一瞬で決着をつけた。埼玉栄高時代の3年間、同じ稽古場で競い合った仲間。迷わず前に出る本来の形で圧倒したい気持ちもあったはずだが、「うるさい相手。突っ込んでいかないようにというのが頭にあった」と落ち着いていた。 前日は立ち合いで大きく変化した貴景勝に敗れた。初日から9連勝の後に3連敗。トップを走っていたことで硬さが出たのか、師匠の八角理事長(元横綱北勝海)に「肩に力が入り過ぎだよ」と言われた。気合が空回りしていたことに気付かされた。 2場所連続負け越しから、巻き返しを期して臨んだ今場所。堂々とした戦いを続ける北勝富士は「平常心で相撲を取れると一番強い」と言った。1差で追う玉鷲を逆転するには、いつも以上に冷静さが重要になってくる。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕北勝富士(左)は翔猿を突き落としで破る=23日、東京・両国国技館