思い描く取り口で快勝した。若元春は力強い当たりで阿武咲の出足を止めると、すかさず右で上手を引いて得意の左四つに。密着を嫌った相手に対して素早く足を運び、勝負をつけた。 初顔合わせの阿武咲とは場所前、荒汐部屋に出稽古に来た時に手合わせ。馬力のある相手に一気に持って行かれることが目立ったが、その反省から「しっかり当たって、自分から踏み込むイメージ」。準備してきたことを本場所で発揮した。 自己最高位の東前頭4枚目で臨んだ先場所は6勝9敗。新入幕から4場所目で初めて負け越したものの、正代を破り、照ノ富士にも大善戦。自分の力が上位陣に通用することを確認できた。貴重な経験を生かすために「立ち合いをもっと仕上げていきたい」。稽古場では、弟の若隆景を相手に前に出る力を磨いてきた。 5勝1敗の好成績にも「勝ち星は結果論なので、いい相撲を取るように心掛けたい」と言って、表情を変えることはない。遅咲きで控えめな28歳が場所前に掲げた目標は、幕内で初めての2桁白星。まだまだ喜ぶわけにはいかない。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕阿武咲(右)を攻める若元春。寄り切りで下して5勝目=16日、東京・両国国技館